アパートやマンションの新築を検討する場合、
「建築構造を木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造のどれにすれば良いのだろうか?」
と、お悩みの方はいませんか?
実は、各構造の特徴やメリット・デメリットを把握しますと、立地に適した構造を見分けることができ、利益の最大化を図ることができます。
この記事では、鉄骨造建物を取り上げ、
- アパート経営における鉄骨造建物の特徴
- アパート経営における鉄骨造建物のメリット・デメリット
- アパート経営における鉄骨造建物の建築費
- アパート経営における鉄骨造建物の減価償却
- アパート経営における鉄骨造建物の利回り
- アパート経営における鉄骨造建物のお勧めエリア
について解説します。
1.アパート経営における鉄骨造建物の特徴
S(steel)造とも表記されます。
鉄骨造は、減価償却による法定耐用年数の規定では
- 鋼材の厚みが4mm以上の場合には、「重量鉄骨造」
- 鋼材の厚みが4mm未満の場合には、「軽量鉄骨造」
となります。
- 鋼材の厚みが、6mm以上の場合を「重量鉄骨造」
- 鋼材の厚みが、6mm未満の場合を「軽量鉄骨造」
と定義する文献も見受けられますが、その根拠は明確ではありません。
重量鉄骨造と軽量鉄骨造の違いを下表にまとめます。
*1 プレハブ工法:建築物の全てもしくは一部の部材を事前に工場生産し、建築現場で組み立てる工法です。
*2 ユニット工法:プレハブ工法の一種です。
住宅の一部分(ユニット)を部屋単位で工場生産し、建築現場で組み立てる工法です。
組立て方は「ラーメン構造」と呼ばれるもので、建物の重量を柱と梁で支える工法です。
柱と梁の接合部が剛接合になっており耐久性に優れることや、建築後の間取り変更などをある程度自由にできます。
鉄骨造によく使われるのが、「ALC(軽量気泡コンクリート)」です。
ALCは、コンクリートを練り混ぜる際に、発泡剤を注入することでコンクリートの中に小さな気泡を発生させます。
強度は、通常のコンクリートより劣りますが、軽量化や断熱性能が高くなります。
主に鉄骨造の壁材や床材に使われます。
2.アパート経営における鉄骨造建物のメリット・デメリット
鉄骨造のメリット・デメリットを下表にまとめます。
2-1.鉄骨造建物のメリット
鉄骨造建物のメリットについて解説します。
2-1-1.メリット1:経済性に優れる
特に軽量鉄骨造の場合、RC造や重量鉄骨造と比較しますと、建築坪単価は低くなります。
重量鉄骨造の場合もRC造と比較しますと、建築坪単価は低くなります。
建築坪単価だけで比較しますと、
となります。
2-1-2.メリット2:リノベーション(間取り変更・増築)し易い
主要構造物である柱と梁の構成であり、壁に耐力を負担させることはありません。
特に重量鉄骨造の場合、壁を取り払うと柱間の間隔が大きいため、リノベーションが可能となります。
例えば、
- ワンルーム2住戸 → ファミリータイプ1住戸に変更
- ファミリータイプ1住戸 → ワンルーム2住戸に変更
まどです。
RC造の場合、壁にも耐力を持たせているため取り壊すことができず、間取り変更などのリノベーションに制約がかかります。
2-1-3.メリット3:建築工期が短い
重量鉄骨造・軽量鉄骨造ともに、主要構造物(柱、梁)や一部の部材は工場生産されるため、建築現場の天候に左右される割合が小さくなります。
その分、工期を短くすることができます。
RC造の場合、雨天の際に生コンクリートを打設することはできません。
コンクリートの強度が小さくなるためです。
雨天の時に生コンクリートを打設している業者は、悪徳業者です。
2-1-4.メリット4:品質管理が容易
主要構造部(柱、梁)や一部の部材は、工場生産されるため、品質管理を徹底することが容易になります。
2-2.鉄骨造建物のデメリット
鉄骨造建物のデメリットについて解説します。
2-2-1.デメリット1:地震に対する揺れが大きい
耐震性に問題はありませんが、鋼材の「粘り」によって地震に耐える構造です。
鉄骨造は、地震が生じても粘りによってしなり変形するため、地震エネルギーを吸収することができます。
ただし、しなり変形することにより、揺れが大きくなります。
2-2-2.デメリット2:耐火性は落ちる
鉄骨造は、摂氏540度で急激に強度がなくなります。
火災が発生し、高温状態にさらされると、倒壊する危険性があります。
様々な建材で、鉄骨部分を耐火被覆する処置が施され、倒壊までに至る時間の長期化を図りますが、限度があります。
2-2-3.デメリット3:防音性・遮音性は落ちる
建物外部からの音が住戸内に入りやすくなり、住戸内の音が外に漏れやすい構造となります。
鋼材そのものが音を伝搬しやすい性質を持っており、上階の音が下階に伝わりクレームが生じやすくなります。
2-2-4.デメリット4:運搬に制約がある
工場生産された鋼材やユニットを建築現場へ搬入する際、重量と寸法の制約により建材を大型トラックに積載します。
建築現場前の道路幅員や建築現場へ至るまでの道路幅員が狭くなると、大型トラックが通行できず、鋼材やユニットの搬入が困難もしくはできない場合もあります。
3.アパート経営における鉄骨造建物の建築費
国土交通省が発行する「建築着工統計調査報告」において、住宅の鉄骨造坪単価の推移は下表の通りです。
木造と同様に年々坪単価が上昇しており、2022年時点では88.3万円/坪です。
西 暦 | 鉄骨造建物の建築坪単価 |
2013年 | 67.3万円/坪 |
2014年 | 69.4万円/坪 |
2015年 | 72.3万円/坪 |
2016年 | 73.3万円/坪 |
2017年 | 75.1万円/坪 |
2018年 | 76.7万円/坪 |
2019年 | 79.2万円/坪 |
2020年 | 82.0万円/坪 |
2021年 | 84.1万円/坪 |
2022年 | 88.3万円/坪 |
(全国平均)(※1)
建築用途別の建築坪単価の推移については、下の記事をご覧ください。
4.アパート経営における鉄骨造建物の減価償却
資産ごとに法律で定められた「法定耐用年数」があります。
鉄骨造の法定耐用年数と償却率を下表にまとめます。
【事例1】
5,000万円の鉄骨造のマンションを建築した場合、年間の減価償却費(概算)を計算します。
重量鉄骨造の場合(鋼材厚:4mm以上)
減価償却費=5,000万円×0.030=150万円/年
軽量鉄骨造の場合(鋼材厚:3mm以上~4mm未満)
減価償却費=5,000万円×0.038=190万円/年
軽量鉄骨造の場合(鋼材厚:3mm未満)
減価償却費=5,000万円×0.053=265万円/年
建築価格が同じであれば、軽量鉄骨造の方が、年間経費として計上できる減価償却費の大きいことがわかります。
5.アパート経営における鉄骨造建物の利回り
利回りに影響を及ぼすのは、年間家賃と建築価格です。
家賃は、大都市中心部であると高く設定でき、地方都市であると安い設定となります。
建築価格は、大都市中心部であれば高くなり、地方都市になると安くなります。
さらに構造(木造・鉄骨造・RC造)の違いによっても、家賃設定価格と建築価格に違いが出ます。
鉄骨造の期待できる利回りを、筆者の経験と大家仲間との情報交換に基づきあえて記すと下表の通りです。
5-1.重量鉄骨造の場合
大都市中心部で表面利回り:6%前後、地方都市で表面利回り:9%前後となります。
重量鉄骨造の場合、建築価格は木造よりも高くなりますので、利回りは木造よりも落ちます。
5-2.軽量鉄骨造の場合
大都市中心部で表面利回り:7%前後、地方都市で表面利回り:10%前後となります。
軽量鉄骨造の場合、建築価格は木造に近くなりますので、木造と同様の利回りとなります。
必ずしもこの通りにはいきませんが、一つの目安として見ていただけると幸いです。
5-3.利回り
表面利回りの計算式は下記の通りです。
また、表面利回りだけでの検討は、片手落ちとなります。
実際に投資を進める際には、実質利回り・ROI(投資収益率)までの検討が必須となります。
実質利回りは、表面利回りに必要経費と建築時諸経費を加味したものです。
ROIは、実質利回りにローン返済額を加味したものです。
損益分岐点はROI=0となります。
表面利回り、実質利回り、ROIの詳しい内容については、下記の記事をご覧ください。
5-4.利回り事例
【事例2】
重量鉄骨造アパートを事例として、表面利回り・実質利回り・ROIを計算してみます。
条件設定は下記の通りです。
・アパートローン金利:3%
・融資期間:25年
・自己資金:1,500万円
・融資金額:6,000万円
表面利回り=720万円÷7,000万円×100
=10.3%
実質利回り=(720万円―144万円)÷(7,000万円+500万円)×100
=7.7%
ROI=(720万円―144万円―342万円)÷(7,000万円+500万円)×100
= 3.1%
【事例2】の重量鉄骨造アパートへの投資判断ですが、利回りの観点だけで判断しますと、ROI>3%となりますので、投資しても良いとなります。
実際には、立地や周辺入居率(空室率)、築年数、出口戦略などを考慮して判断する必要があります。
6.アパート経営における鉄骨造建物のお勧めエリア
重量鉄骨造と軽量鉄骨造とに分けて解説します。
6-1.重量鉄骨造の場合
重量鉄骨造により、階数は10階建前後まで建てることができます。
用途地域については、住居系・商業系・工業系(工業専用地域は除く)のいずれについても、不動産投資物件を建築することに適します。
ただし、遮音性に劣るデメリットがありますので、子供がいるファミリー世帯には適さず、ワンルームに適します。
6-2.軽量鉄骨造の場合
木造と同様に、人口が比較的少ない地方都市ですと、入居候補者の母数が小さいため、戸数(2戸~10戸)を少なくして建てるには適しています。
また、家賃設定や必要経費をかけられない地域においても適しています。
さらに、強度的に3階建てまでとなりますので、高さ制限が厳しい住居系の用途地域に適しています。
7.まとめ
以上、
- アパート経営における鉄骨造建物の特徴
- アパート経営における鉄骨造建物のメリット・デメリット
- アパート経営における鉄骨造建物の建築費
- アパート経営における鉄骨造建物の減価償却
- アパート経営における鉄骨造建物の利回り
- アパート経営における鉄骨造建物のお勧めエリア
について解説しました。
鉄骨造は、経済性や耐久性などの性能において、鉄筋コンクリート造と木造の中間の位置付けとなります。
その中でも、重量鉄骨造は鉄筋コンクリート造に近くなり、軽量鉄骨造は木造に近くなります。
それぞれの特性を見極めた上でアパート建築に活かし、アパート経営を成功に導く必要があります。
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9.出所
※1 「建築着工統計調査報告」(平成30年度分) 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_000830.html
※2 「耐用年数(建物/建物付属設備)」 国税庁
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