国土交通省都市局が進める3D都市モデル整備プロジェクトが、「PLATEAU」(プラトー)です。(※1)
これまで都市局では、
・区画整理
・インフラ整備
・都市の再開発
などといったハードなまちづくりに加え、
・エリアマネジメント
・地域活性化
などといったソフトなまちづくり施策を行ってきました。
この記事では、
- 「PLATEAU」の概要
- 「PLATEAU」の展望
- 「PLATEAU」の活用事例
について解説します。
「PLATEAU」の活用により、
- 3D都市モデルの整備
- 3D都市モデルのユースケース開発
- 3D都市モデルの整備・活用ムーブメントの惹起
が可能となります。
1.「PLATEAU」(プラトー)の概要
PLATEAU (プラトー)は、国土交通省が進める 3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化 のリーディングプロジェクトです。
都市活動のプラットフォームデータとして、3D都市モデルを整備し、 そのユースケースを創出します。
また、オープンデータとして公開することで、誰もが自由に都市のデータを引き出し、活用できるようになります。
1-1.「PLATEAU」は3D都市モデルプラットフォーム
3D都市モデルは、フィジカル空間(実世界)の都市をサイバー空間(仮想世界)に再現した三次元の都市空間情報プラットフォームです。
二次元の地図に、
・建物・地形の高さ
・建物・地形の形状
などを掛け合わせて作成した三次元の地図に、
・建物名称
・建設年
・建物地上階数
・建物地下階数
・建物構造
・建物用途分類
・住所
などの属性情報を加え、都市空間そのものをデジタル上で再現したものです。
1-1-1.全国波及と活用拡大
PLATEAUは、3D都市モデル整備の全国波及と活用拡大を目指します。
2020年度中に、東京23区をはじめとする全国約50都市で3D都市モデルを整備し、多様なテーマで
・ユースケース(*1)開発
・ハッカソン(*2)
を実施しました。
プロジェクトにおいて集積した知見や活用手法を集積し、その成果をオープンデータ化することで、全国展開につなげていきます。
1-1-2.3D都市モデルの提供価値
◆ビジュアライズ(視覚性)◆
都市空間を立体的に認識可能となり、説明力や説得力が向上します。
◆シミュレーション(再現性)◆
立体情報を持った都市空間を、サイバー上に再現することで、幅広く精密なシミュレーションが可能です。
◆インタラクティブ(双方向性)◆
フィジカル空間とサイバー空間とが相互に情報交換し、作用し合うためのプラットフォームを提供します。
これらの価値が複合的に発揮され、
・都市のデジタルツイン
・新たなソリューション創出
を実現します。
1-2.「PLATEAU」の由来
PLATEAUは、一つの頂上を目指す統一的構造ではなく、多様で自律・分散的なシステムが平面的に接続・連続することで強靭性を獲得していく哲学的な実践とされています。
国土交通省が創る3D都市モデルは、データの拡張性と連携性の高さにより、
- あらゆる分野において自律的・分散的・脱中心的価値の結び付きを惹起
- 各プレイヤーが、ソリューションを思考・実装することが可能な結節点
としての機能を有するアーキテクチャです。
3D都市モデルが、
- 社会に無数の結節点を提供
- あらゆる分野がサイバー空間を介して相互につながり発展
していくことにより、自律的で強靭な世界の発展への期待が込められています。
1-3.「PLATEAU」の経緯
PLATEAUは、2020年4月に起動しました。
2020年4月:PLATEAU起動
2020年11月:東京モデル作成
- 東京23区など一部地域において、3D都市モデルを中間成果物として先行的に作成
- クローズドデモを実施
2020年12月:オープンデモ(Ver0.1)
- 東京モデルを活用して、一般向けにオープンデモを実装
- 全国構築対象都市の公表
2021年3月:全国のモデル整備・ユースケース開発
- 全国56都市で3D都市モデルを整備
- 多様な分野における3D都市モデルのユースケース開発を実証
2021年4月:全国のモデル公開・オープンデータ化(Ver1.0)
- 全国56都市の3D都市モデルデータを順次オープンデータ化
- 実証実験の結果をまとめたドキュメント公開
- コンセプトフィルム・ユースケースフィルムを公開
ここで、コンセプトフィルムをご覧ください。
1-4.「PLATEAU」と「Google Earth」との違い
Google Earthは、都市空間の形状だけを単に再現したデータフォーマットです。
地形と建物のデータ上の区別はありません。
PLATREAUは、地形や建物データの中に、属性情報が組み込まれます。
例えば、
- 建物の外壁や屋根などの面が分割されており、細かくコーディング
- 商業施設やオフィスビル・マンション・駅舎といった施設の役割などもコーディング
プログラム側で、解析やシミュレーションなどが可能であることが最大の特徴です。
1-5.3D都市モデルをオープンデータとして公開
PLATEAUは、「CityGM2.0」という国際的に標準化されている規格を利用しています。
CityGMLでは、3D都市モデルの詳細度に応じてLOD(Level of Details)が設定され、
- LOD1:建物の2D形状に高さ情報を追加したシンプルな箱モデル
- LOD2:LOD1に屋根形状を追加したもの
- LOD3:窓やドアなどの外構(開口部)を追加したもの
- LOD4:建物内部までBIM/CIM等でモデル化したもの
と4つのレベルに分類されます。
2.「PLATEAU」の展望
PLATEAUが提供する3D都市モデルは、単なる三次元的なモデルデータではありません。
空間的な意味を持ったデータとなります。
データ上で都市空間や都市活動を再現し、都市の意味そのものがマシンリーダブル(*3)となるデータの整備を目指します。
サイバー上で機械が判読しますと、フィジカルな都市と同じ意味情報を読み取ることができるデータとなります。
データ整備・公開を通して、3つのテーマ
・全体最適化・持続可能なまちづくり
・人間中心・市民参加型のまちづくり
・機動的なまちづくり
を目指します。
2-1.全体最適化・持続可能なまちづくり
まちづくりを経験則により行うのではなく、
- シミュレーション(模擬実験)
- インタラクティビティー(相互作用)
を活用し、科学的・長期的な視点でまちづくりを継続します。
2-2.人間中心・市民参加型のまちづくり
3D都市モデルの持つビジュアライゼーション(視覚性)の機能を活用することで、
- まちづくり計画の可視化
- 住民理解の促進化
などを図ることができます。
また、複雑で困難な
・まちづくりの計画
・都市の課題
などを、わかりやすくビジュアル化することで、
- 住民側から課題解決のアイデアや提案の募集
- まちづくりに多様な主体の知恵・想いの集積
が可能です。
いわゆる「シビックテック」(*4)のための活用です。
2-3.機動的なまちづくり
動的な都市活動を再現するリアルタイムデータなどと組み合わせることにより、シミュレーションをより現実に近いものに近づけることが可能です。
例えば、都市計画の場合、20年の計画を5年~10年間隔で検討したくても、簡単に変更することができませんでした。
ただし、コロナ禍などの影響もあり、都市に対するニーズや働き方・暮らし方は、大きく短期間で変化します。
この変化に、まちづくりが対応するためには、短い間隔で機動的に見直しを行う必要があります。
国土交通省都市局が、56都市のデータを、先行プロジェクトとして作成しました。
今後は、他の自治体も自らが同様にデータ作成し活用します。
3.「PLATEAU」の活用事例
PLATEAUの主な活用事例として
・都市活動モニタリング
・防災
・まちづくり
などが挙げられます。
ここで、ユースケースフィルムをご覧ください。
3-1.都市活動モニタリング
人やモノの動きが俯瞰で見ることができます。
オープンデータを使用し、都市の未来をシミュレーション可能です。
◆事例1◆ ソーシャルディスタンシング判定技術
栃木県宇都宮市では、ソーシャルディスタンシング判定技術の活用検証を行いました。
この実証実験では、施設に設置したカメラ映像を個人情報保護に配慮した形式で利用。
映像内の場所と大きさの関係を計算することで、人と人との距離を高精度に求めることを検証しました。
繁忙期(2021年1月)において、ソーシャルディスタンシング(約2m)の確保状況の可視化や混雑度を統計データ化し、
- イベント開催
- 都市内回遊性
- 感染拡大防止等の推進
に活用します。
将来的には、
- 人流と顧客ニーズの活用によるおもてなしの向上
- 中心市街地などの活性化
- 災害時の迅速な避難誘導
などの複数分野の取組みに活用することを目指します。
◆事例2◆ 既設カメラ画像のAI解析による人流・交通流モニタリング
愛知県安城市では、他の用途のために設置された街中の既設カメラを利用し、AIによる映像解析技術を活用しました。
そうすることで、エリア全体の人流を測定できるか否かの技術検証を行いました。
データ収集のコストを抑えながら、
- 人流・交通流データを取得
- 3D都市モデル上に可視化
- 交通上の支障等の課題抽出
を行います。
この試みにより、安城市が進める「まちをつかってつくる」という新しい取組みを、低コストで実現することができます。
他にも
「スマートフォンなどが発する電波を活用した混雑状況モニタリング」
など、様々な取組みが報告されています。
3-2.防災
災害リスクの可視化が可能です。
社会全体で、災害に備えるまちづくりが可能です。
◆事例3◆ 垂直避難可能な建築物の可視化等を踏まえた防災計画検討
福島県郡山市では、郡山駅周辺等をモデル地域とした3D都市モデルを活用した防災政策の高度化の実証実験を試みました。
3D化した浸水想定区域図を活用し、「垂直避難」が可能な建物のピックアップを実施し、3D都市モデル上に可視化を試みます。
また、ハザードマップ等既存の防災施策と本実験結果を踏まえ、「防災指針」の検討等に活用することを目指します。
全国には、「想定最大規模(L2)」の洪水が生じた場合、中心市街地のほぼ全域が浸水するエリアも少なくありません。
その場合、有効な防災手法の一つが、住民が自宅や周辺の「高い」建物に避難する「垂直避難」の手法です。
今回の実証実験では、浸水想定区域図の3D化と併せて、「垂直避難」可能な建物のピックアップを試みました。
その結果、自宅などが垂直避難可能か否か、もしくは周辺に垂直避難可能な建物があるか否かを事前に把握することが可能となりました。
単なる建物や災害リスク情報の3D化だけでなく、
・建物高さ
・地上階数
・浸水深
・構造種別
といった属性情報を建物ごとに搭載可能なCityGMLの特徴を活かすことで、高度な防災対策の立案・実施が可能となります。
また、避難所・避難場所も合わせて表示したことにより、想定浸水深が深く、周辺に高い避難所が少ない地域の住民に対して、早めの避難行動を促すことが可能となります。
3-3.まちづくり
都市開発のビジョンを共有し、まちづくりを科学化します。
◆事例4◆ プローブパーソン調査を活用したスマートプランニング
静岡県沼津市では、今後本格的に事業展開を迎える連続立体交差事業をはじめとする沼津駅周辺総合整備事業により、
- 南北交通環境が劇的に改善
- 駅周辺の回遊性の向上
- 鉄道施設跡地や高架下空間が新たに誕生
が可能となります。
これらを活用した新たな拠点が整備されるなど、中心市街地に極めて大きなインパクトを与えることになります。
その検証として、「沼津市中心市街地まちづくり戦略」に基づき、沼津駅周辺で構築した3D都市モデルに、プローブパーソン調査の結果を重ね合わせることで、
- 駅前空間の人流を俯瞰で可視化
- 回遊行動を明確化
を行います。
これを活用して歩行者目線を重視した駅前空間の再編により、人々の回遊行動に、どの様な影響を与えるのかを検証します。
将来的には、歩行回遊行動シミュレーションモデルと連係した駅周辺の公共空間再編への活用も期待されます。
3-4.国土交通省の動向
国土交通省は2023年度から、地方自治体がビッグデータを活用して立ち上げる街づくりの新規事業に最大1000万円を補助します。
建築物の高さや用途といったデータを仮想空間上に3次元(3D)で再現する基盤を活用、防災や観光などに役立てる事業を想定します。
都市開発のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向け官民協業を後押します。
4.まとめ
以上、
- 「PLATEAU」の概要
- 「PLATEAU」の展望
- 「PLATEAU」の活用事例
について解説しました。
「PLATEAU」は、フロンティアな領域であるため、未解決な問題が山積しているのが現状です。
プロジェクトを運用していく途上で、
・課題の明確化
・法的な論点
などが判明し、解決を図りながら事例を積み重ね、制度のスキームを構築していくものと思われます。
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6.参考・引用WEBサイト
※1 「PLATEAU」 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/plateau/
※2 「G空間情報センター」 一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会
https://www.geospatial.jp/gp_front/
※3 「PLATEAU VIEW」(Ver.1.0) 国土交通省
※4 「3D都市モデルの導入ガイダンス」
https://www.mlit.go.jp/plateau/file/libraries/doc/plateau_doc_0000_ver01.pdf
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