アパート・マンション入居者に対して、回線速度が速いインターネットサービスを提供することは、当然となっています。
ここで、
「インターネット無料は、本当に入居率向上に役立つのだろうか?」
「入居者は、インターネットを有効利用するのだろうか?」
と、お悩みの方はいませんか?
この記事では、
- アパート・マンション経営にインターネット無料は有効
- アパート・マンション経営におけるインターネット回線方式
- アパート・マンション経営におけるインターネット導入の注意点
- アパート・マンション経営におけるインターネット導入方法
について解説します。
インターネット回線の充実度合いが、直接的にアパート・マンションの入居率に影響することが理解できます。
1.アパート・マンション経営にインターネット無料は有効
ここでは、
- 入居者に人気の設備ランキング
- テレビからネット動画の時代
- ゲームや学習もインターネット回線が必須
- セキュリティや入居者サービスもインターネット回線が必須
- 通勤からテレワークの時代
について解説します。
1-1.入居者に人気の設備ランキング
「全国賃貸住宅新聞」が、「入居者に人気の設備ランキング」を毎年実施しています。
その中で「インターネット無料」が、
・単身者向けは、2015年から2023年にかけて9年連続
・ファミリー向けは、2016年から2023年にかけて8年連続
1位を獲得しました。
それだけアパート・マンションの入居率向上にとって、「インターネット無料」は、必須アイテムになっています。
1-1-1.単身者向け設備ランキング
「全国賃貸住宅新聞」が発表した、2020年から2022年までの3年間における、単身者向け「入居者に人気の設備ランキング」を下表にまとめます。
中でも、高速インターネットの需要が、年々増加しています。
1-1-2.ファミリー向け設備ランキング
2020年から2022年までの3年間における、ファミリー向け「入居者に人気の設備ランキング」を下表にまとめます。
ファミリー向けにおいても、高速インターネットの需要が、年々増加しています。
1-2.テレビからネット動画の時代
テレビは、番組予定表通りに放映されるため、決まった時間にしか視聴できないというデメリットがあります。
しかし、YouTubeやABEMA、TVer、GYAOなどのネット動画サービスは、好きな時間に何度でも視聴できるというメリットがあり、特に若い世代に人気があります。
その様な若い世代が増加していることこともあり、
・テレビ視聴者数は、年々減少
・ネット動画の視聴者数は、年々増加
の傾向にあります。
自宅において、ネット動画を視聴できる環境は、若い世代には必須といえます。
1-3.ゲームや学習もインターネット回線が必須
家庭用ゲームも、インターネット回線に接続して、楽しむタイプのものが当たり前になりました。
デバイス(テレビやパソコン、タブレット、スマホ、ゲーム専用機器など)は全てインターネット接続できるようになっています。
そうすることで、対戦型や共同作業型のゲームを、日本はおろか世界中の見知らぬ人たちと繋がることにより、ゲームを楽しむことができます。
子供がいる世帯おいては、必然的にインターネット利用は、増加します。
子供は、生まれながらにインターネットを利用する機会に触れているため、当然のごとく利用します。
学習教材も、インターネットを利用して、学習を進捗させる形式が増加しています。
また、習い事もインターネットを利用しながら指導する形式が増加しています。
今や、高速インターネット接続は、学習・趣味・遊興には欠かせない必須アイテムとなっています。
1-4.セキュリティや入居者サービスもインターネット回線が必須
防犯カメラ設置は、不審者の侵入抑止効果があり、セキュリティには効果的となります。
特に、女性単身者が入居する場合には、防犯カメラなどのセキュリティの充実が必須となります。
防犯カメラが、インターネット回線に繋がれば、警備会社や管理会社、大家のデバイスにも繋がり、タブレットやスマホで手軽に監視することができます。
仮に事件などが生じても、記録として一定期間映像データが保存されますので、検証に利用することもできます。
インターネットによるセキュリティの特徴とメリットを下表にまとめます。
上記のネットワーク防犯カメラ以外にも、インターネットに繋がる様々な入居者サービスが、続々と開発されています。
1-5.通勤からテレワークの時代
2020年からの新型コロナウィルスの感染拡大により、業務のテレワークが一気に普及しました。
その結果、テレワークにおいても十分に成果が実証されることにより、この傾向は持続するものと思われます。
そうなりますと、オフィスが不要とまでいわれるようになり、今後益々自宅でのテレワークが普及します。
したがって、アパート・マンションにおいても、インターネット環境の充実や質の向上が、求められることとなります。
なお、ワークスペースについては、下記の記事をご覧ください。
2.アパート・マンション経営におけるインターネット回線方式
光回線とWi-Fiとの回線方式の違いや、回線速度、価格、手間などの違いを解説し、それぞれのメリット・デメリットをまとめます。
入居者の利用形態により、選択する方式が違ってきます。
2-1.インターネット無料の回線方式
「インターネット無料」の回線方式には、
・光回線(有線LAN方式)
・Wi-Fi(無線Wi-Fi方式)
があります。
2-1-1.有線LAN方式
各住戸まで有線LANケーブルが引き込まれているため、安定した通信速度の確保が可能となります。
パソコンから部屋のコンセントにある有線LANケーブルの接続口に差し込み、インターネットを利用します。
無線Wi-Fiを利用する場合には、有線LANケーブルの接続口に無線Wi-Fiルーターを差し込み、Wi-Fiを利用します。
2-1-2.無線Wi-Fi方式
この方式は、導入工事が簡易で済むため、導入時間を短縮することができます。
しかし、無線Wi-Fi方式は、木造しか利用できず、
・鉄筋コンクリート造
・鉄骨造
のアパートに対しては、壁が厚く電波が届かなくなります。
また、無線Wi-Fiルーターからの距離にも、回線速度は影響されます。
2-2.回線方式による速度の比較
回線方式による回線速度の違いを下表にまとめます。
2-2-1.有線LAN方式
有線LAN方式の場合、各社とも回線速度は1Gbpsを提供しています。
NTT東日本は、1住戸ごとに1Gbpsを提供しているのに対し、インターネット会社は、棟全体(全住戸)に対して1Gbpsを提供しています。
NTT東日本の場合、各住戸まで専用の光ファイバーを引き込みます。
したがって、各住戸の入居者は、1Gbpsの回線速度を安定して利用することができ、1戸建てと同じ感覚となります。
自宅でのリモート業務に向いているスタイルといえます。
一方、インターネット会社は、1Gbpsの回線速度を全住戸でシェアする方式となります。
2-2-2.無線Wi-Fi方式
無線Wi-Fi方式の場合、有線LAN方式と比較しますと、数字上は若干落ちますが、中小規模のアパート・マンションの場合、実際の利用には支障が生じません。
最高画質のYouTube動画を見るのに、必要な回線速度は3Mbpsです。
無料Wi-Fi方式の回線速度が、866Mbpsとなりますので、288台分のデバイス(パソコンやスマホなど)に対応することができます。
一般的な10戸~20戸前後のアパートの場合、例えば1戸当たり3台のデバイスがあるとします。
YouTubeを全戸数全デバイスが同時に視聴しても、90Mbps~180Mbpsもあれば、足りる通信速度となります。
したがって、回線速度に問題はありません。
2-3.回線方式による料金の比較
回線方式の違いによる価格の違い(目安)を下表にまとめます。
(一般的なアパート:木造2階建て10戸)
また、回線方式による経過月数ごとの累積価格の違いを下表にまとめます。
(一般的なアパート:木造2階建て10戸)
2-3-1.有線LAN方式
有線LAN方式の場合、NTT東日本と他のインターネット会社とを比較します。
- インターネット開設8か月目までは、NTT東日本の方が、累積価格は一番安くなります。
- 9か月目以降になりますと、インターネット会社Bの方が,累積価格は安くなります。
- 13カ月目以降は、インターネット会社Aの方が安くなります。
2-3-2.無線Wi-Fi方式
無線Wi-Fi方式の場合、NTT東日本とバッファローとを比較します。
- インターネット開設1年までは、NTT東日本の方が、累積価格は安くなります。
- 13か月目以降は、バッファローの方が安くなります。
インターネット開設1年までは、NTT東日本の方が、累積価格は安くなります。
しかし、13か月目以降は、バッファローの方が安くなります。
2-4.回線方式による手間の比較
手間がかからないのは、無線Wi-Fi方式となります。
有線LAN方式と異なり、住戸内工事が必要ないため、入居者の在宅や不在の確認をすることなく工事が可能です。
実際の工事としては、アパートまで光回線を引く工事として、NTTが約1か月をかけて行います。
その後、無線Wi-Fiルーターを、アパート・マンションの外壁やベランダに取付けるのに、約1日で行います。
2-5.回線方式による安定性の比較
通信の安定性は、有線LAN方式の方があります。
無線Wi-Fi方式の場合、無線Wi-Fiルーターからの距離がありますと、通信状態が悪くなります。
また、外部環境にも影響され易く、通信速度が極端に悪くなる可能性もあります。
2-6.回線方式によるメリット・デメリット
有線LAN方式と無線Wi-Fi方式のメリット・デメリットをまとめますと、下表の通りです。
業務などで利用する場合には、有線LAN方式が向いています。
スマホやタブレットなど、移動しながら利用する場合には、無線Wi-Fi方式が向いています。
3.アパート・マンション経営におけるインターネット無料の導入の注意点
インターネット無料により、入居者の満足度を高めることはできます。
しかし、大家の負担は増えます。
そこで、完全にインターネット無料を謳うのではなく、大家の負担の一部を、インターネット回線を利用する人にだけ適用する方法などが考えられます。
利用者の共益費を上げたり、新規入居者から共益費を上げるなどの対策を講じます。
3-1.既存入居者への対応
既存入居者は、インターネット導入による共益費のアップに対して、躊躇します。
特に、長期間の入居者にとっては、なおさらです。
中には、インターネットを利用しないどころか、スマホを所有していない人もいます。
一様に共益費を上げることに対して、反発されることが想定されます。
そこで、既存入居者に対しては、インターネットを利用される方だけ、共益費を1,000円~2,000円の値上げに抑える方法もあります。
その際、事前に入居者に対して、アンケート調査を行ってもいいかもしれません。
丁寧に説明を行えば、スムースに納得いただける可能性が高くなります。
3-2.新規入居者への対応
新規入居者に対して共益費をアップし、既存入居者に対してサービス向上による長期入居を目的として、共益費アップを据え置きする方法もあります。
この方法ですと、共益費の違いがインターネット導入前後の違いによることを、明確に入居者に説明できるため、有効と考えられます。
3-3.導入工事における注意点
有線LAN方式・無線Wi-Fi方式のいずれも、アパートまでの光ファイバー回線の引込工事は必要になります。
その後、接続機器を通して、
- 有線LAN方式の場合には、各住戸までの引込工事が必要
- 無線Wi-Fi方式の場合には、外壁などに無線Wi-Fiルーターなどの設置工事が必要
となります。
工事期間も異なります。
有線LAN方式の場合、各住戸へのケーブル引込工事が生じますので、入居者との日程調整による工事日のバラツキにより、時間がかかります。
見積り依頼から工事完了までの期間は、
・有線LAN方式の場合:約2.5か月
・無線Wi-Fiの場合 :約1.5か月
となります。
3-4.契約における注意点
アパートの各入居者が、個別にインターネット会社と契約して、引込み工事を行うことは、効率的とはいえません。
しかし、大家がまとめてインターネット会社と契約すれば、一括して工事を行うことができ効率的です。
3-4-1.入居者と大家の料金比較
入居者が個別に契約しますと、月額5,000円前後の料金が入居者にかかります。
しかし、大家がまとめて契約しますと、10戸前後の月額利用料金は12,000円前後となります。
共益費として、1,500円前後のプラスで利用することができますので、入居者にとっては価格面でもメリットとなります。
3-4-2.契約期間
契約期間は、インターネット会社により様々です。
長期での縛りの有無は、インターネット会社ごとに確認することが必要です。
4.アパート・マンション経営におけるインターネット無料の導入方法
入居者に対する満足度の向上や空室対策として、インターネット無料の導入を図るため、インターネット会社の選択が重要となります。
入居者の満足度と大家の負担額を天秤にかけながら、最適解を導き出すことがポイントです。
4-1.管理会社へ問合せ
管理会社への相談は、必要に応じて行うのが賢明です。
例えば、入居者から管理会社へインターネットに関する要望が、既に入っている可能性もあります。
それらの入居者情報をヒアリングできれば、管理会社との打合せは、有効なものとなります。
大家自身が、入居者とコミュニケーションが取れているようであれば、管理会社への相談は不要となります。
4-2.インターネット各社へ見積依頼
インターネット会社へ見積依頼をする場合、
・建物構造
・回線速度・安定性
・サポート体制
などに留意しながら行うことが必要です。
また、価格や性能などを比較検討するために、少なくとも数社に見積り依頼を行う必要があります。
見積り依頼後、インターネット会社の担当者が現地確認を行いますが、主に共用部分となります。
この段階での現地での立会は不要です。
4-2-1.アパート・マンション構造を連絡
有線LAN方式は、どの建物構造にも対応できますが、無線Wi-Fi方式は、木造しか対応できません。
先ずは、インターネット会社へアパート構造を伝えることが先決となります。
4-2-2.回線速度・安定性
入居者の利用状況により、回線方式を考慮する必要があります。
在宅中に簡易な調べ物や好きなYouTube動画を見る程度ならば、インターネット専門会社に見積依頼をしても良いです。
しかし、在宅勤務が増加する中、
・WEBデザイナー
・エンジニアリング
・Eスポーツのゲーマー
などの入居者には、回線速度や安定性、セキュリティを求められます。
その場合には、NTTにより各住戸まで光ファイバー回線を引く方式が良策といえます。
ただし、他の方式と比較しますと、長期利用の場合には価格は高くなります。
4-2-3.サポート体制
インターネット会社の利用者に対するサポート体制も、考慮に入れる必要があります。
365日24時間体制でサポートする会社もありますし、時間帯を9:00~18:00までと限定する会社もあります。
これらも、入居者のインターネット利用状況を調査した上での選択が、必要となります。
4-3.業者を選択し契約
依頼した業者から見積りが提出された後に比較検討し、選択・契約となります。
契約する前に、疑問点は必ず質問して解消し、不安を残さない様にすることが大切です。
4-4.入居者へ告知
入居者に対するインターネット導入の告知方法などについて、大家・インターネット会社・管理会社が、打合せを行います。
・工事開始日
・工事期間
・住戸内工事日
・工事個所
などの事前確認を、後日トラブルが生じないように、入念に行います。
4-5.インターネット接続工事
入居者に対する告知を確認できれば、インターネット接続工事を開始します。
住戸内工事がある場合には、少なくとも工事の前日までに、入居者に対して連絡・確認を行います。
確認を行いますと、入居者不在による工事不可といったトラブルを防止できます。
4-6.インターネット開始
回線速度などの点検・確認作業が終了すれば、インターネット無料の開始となります。
開始後もトラブルが生じないかなどの注意やサポート体制の確認が必要です。
5.まとめ
以上、
- アパート・マンション経営にインターネット無料は有効
- アパート・マンション経営におけるインターネット回線方式
- アパート・マンション経営におけるインターネット導入の注意点
- アパート・マンション経営におけるインターネット導入方法
について解説しました。
今後、アパート・マンションの空室対策は、インターネットを介した設備機器である「IoT」に移行するものと思われます。
その鍵は、スマホでの利用可否や遠隔操作の可否などとなります。
アパート・マンションの大家にとって、インターネットやIoTなどの情報収集は必須項目となります。
また、導入していかなければならない設備機器となります。
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7.参考・引用Webサイト
※1 「ネット無料、首位独走【入居者に人気の設備ランキング2023 付加価値辺】」
全国賃貸住宅新聞
https://www.zenchin.com/news/content-1257.php
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