一戸建てやマンションなどの住宅を建築する場合、建物の基礎形状を決定するために、地盤調査が必要になります。
特に注文住宅の場合、建築主自らが地盤調査を依頼する必要があります。
しかし、地盤調査には、様々な方法があります。
「地盤調査の費用はいくらかかるのだろうか?」
「地盤調査の期間はどれ位かかるのだろうか?」
と、お困りの方はいませんか?
実は、注文住宅の場合、大半はスクリューウェイト貫入試験(SWS試験)という方法で済ませることができます。
この記事では、
- 地盤調査の概要
- 地盤調査の目的
- 地盤調査の種類と費用
- 地盤調査の期間
- 中古住宅や建売住宅でも地盤調査は必要
について解説します。
地盤調査は、将来売主の立場になるケースも考慮に入れ、必ず実施しておいた方が賢明です。
1.地盤調査の概要

地盤調査は、住宅などの建物を建てるために、
- 建物を安全に支えることができるのか?
- 軟弱地盤の場合、建物をどの様に支えるのか?
などを決めるための事前調査になります。
地盤の強度が、地盤調査により明確になれば、建物を安全に建てるための基礎データとなります。
地盤は、建物などの基礎を支える地面のことです。
地盤が支持することにより、様々な建物などが、形状や位置を保つことができます。
柔らかい粘土や砂などでできた軟弱地盤の上に建物を建てますと、
・地震発生時に液状化
・建物自重に耐え切れず、沈下や傾斜
し、大きな問題となります。
建物が丈夫だとしても、地盤が軟弱であれば、安全な建物とはいえません。
地盤は建物の安全性を決定づけるため、建てる前に地盤調査を行い、その強度などの特性を把握する必要があります。
地盤調査は、住宅建築を依頼したハウスメーカーや建築士などの判断により実施されます。
必要と判断された場合、地盤調査会社を選定し、調査を依頼します。
2.地盤調査の目的




地盤調査を行う目的は、
・地盤構成の把握
・地盤強度の把握
・地盤支持力の把握
・土質・土層の把握
・地下水位の把握
の5つとなります。
建築計画を作成する建築士が、建物の用途に応じて、どの調査を実施するのかを選定します。
2-1.地盤構成の把握
地盤調査は、当該土地における地盤構成の把握に必要です。
過去にどの様な経緯で地盤が形成されたのかを調査します。
いわゆる「地質学的調査」に該当します。
例えば、
- 河川の流砂による堆積から成る地盤
- 火山噴火による噴出物の堆積から成る地盤
- 人工的に造成(盛土・切土・埋立地など)されたことによる地盤
などです。
それらが重なりあっている場合もあります。
地盤構成が、
・自然的なものなのか?
・人工的なものなのか?
により、地盤の強度は異なります。
2-2.地盤強度の把握
地盤調査は、地盤強度の把握に必要です。
- 河川や湖沼などに比較的近い立地であれば、地盤強度は低くなる可能性が高い
- 岩盤などで構成されている立地であれば、地盤強度は高い
傾向にあります。




これらのデータが、地盤支持力と相まって、建物の基礎形状を決める一つの判断基準になります。
2-3.地盤支持力の把握
建物の基礎形状を決定づけるデータが、地盤支持力となります。
上記の地盤強度と地盤支持力は異なります。
組合せとしては、
- 地盤強度:強、地盤支持力:強 → 直接基礎(布基礎・べた基礎)など
- 地盤強度:弱、地盤支持力:強 → 支持杭
- 地盤強度:弱、地盤支持力:弱 → 地盤改良・摩擦杭
となります。




それぞれのケースにより、建築物の基礎形状は異なります。
例えば、
- 地盤強度:強、地盤支持力:強の場合
地表面から地下すぐに硬い岩盤などが存在するケースです。
直接基礎(布基礎・べた基礎)などが候補として挙がります。 - 地盤強度:弱、地盤支持力:強の場合
地表面から地下数m~十数mまでは泥炭などの柔らかい土層で構成されており、その層の下に硬い岩盤が存在するケースです。
硬い岩盤まで到達させる支持杭などの基礎形状が候補として挙がります。 - 地盤強度:弱、地盤支持力:弱の場合
地表面から地下数十mまで調査しても、柔らかい土層で構成されているケースです。
地盤改良や摩擦杭などの基礎形状が候補として挙がります。
2-4.土質・土層の把握
土質は、土壌の物理的・化学的性質のことです。
粘土・シルト・砂・礫の土質名は、粒子の大きさ(粒径)により決まります。




土質名には、
・砂質シルト
・砂混じり粘土
という名称が使用されます。
質や混じりは、各土質の混入割合により決められています。
・質 :混入率が15%~50%未満
・混じり:混入率が5%~15%未満
例えば、砂質シルトの場合、
・砂が15%~50%未満の混入率
・シルトが50%~85%の混入率
となります。
土層は、土壌で構成された広義の地層の一つで、上記の地盤構成と重なる部分もあります。
土層を形成する土質の種類を分類し、各土層の強度や支持力、変形有無、揺れやすさなどを調査します。




下表はある立地における土質と土層を調査した結果をまとめたものです。
これらのデータを基にして、建物の基礎形状を決定します。




2-5.地下水位の把握
地下水位の高低により、建物の耐震性に影響を与えます。
地下水位の把握は必須です。
ただし、一般的な戸建住宅の様な規模が比較的小さい建物の場合、設計に考慮されないケースがあり、注意が必要です。
液状化の判定は、土質・土層・地下水位などのデータから総合的に判断して見極めます。




・地下水位が高く、均一な土質の土層が拡がっている地域では、液状化が発生し易くなります。
・地下水位が低く、様々な土質が混合しているケースや土層が入り込んでいるケースでは、液状化は発生しにくくなります。
3.地盤調査の種類と費用
一戸建ての地盤調査の種類として
・スクリューウェイト貫入試験
・ボーリング試験
・表面波探査法
があります。
3-1.スクリューウェイト貫入試験(SWS試験)
一般的な戸建住宅の地盤調査には、スクリューウェイト貫入試験(SWS試験)が使用されます。
SWS試験は、他の地盤調査方法と比較して、低コストで簡易的に行うことができるため、一戸建木造住宅の場合によく採用されます。
おもりの重さとスクリューポイントの回転数により、地盤強度を測定します。調査費用も安価で、導入し易いという特徴があります。
スクリューウェイト貫入試験は、2020年10月まで、スウェーデン式サウンディング試験と呼ばれていました。
JIS規格の改正により、名称変更となりました。
略称は、SWS試験のまま変更ありません。
作業している動画がありますのでご覧ください。
(出所:ryouji9713)
住宅などの建築物の荷重は、長方形状の場合、四隅にかかり易くなります。
そこで、スクリューウェイト貫入試験の計測ポイントは、建築物の中心点と四隅と計5箇所になります。
建築物の形状により計測ポイントを6箇所以上計測することもあります。
しかし、3m前後の違いでは土質に違いはそれほど生じないため、5箇所のままで計測を進める場合もあります。
計測深度としては、約10mまでの深さとなります。
スクリューウェイト貫入試験にかかる時間は、約半日ですが、正確な分析結果が出るまでに数日を要します。
地盤改良の必要性の有無については、スクリューウェイト貫入試験直後にわかります。
ただし、土質が砂質土か粘性土かの判定はできますが、地盤の構成や傾斜の状態、地下水位まで把握することはできません。
一戸建木造住宅の場合、その重量を考慮しますと、地盤の詳細なデータまで把握する必要はなく、スクリューウェイト貫入試験での判定にて十分です。
試験費用は、約5万円~10万円です。
3-2.ボーリング試験(標準貫入試験)
マンション建築の場合、地盤調査にはボーリング調査(標準貫入試験)を採用します。




計測深度は、硬い岩盤などの支持層に到達するまで行われるため、立地によっては数十mになることもあります。
土を採取し、
・土質や土層
・地盤の傾斜
・構成状態
・地下水位
などの詳細を調査します。
試験費用は、マンションの規模により異なり、数十万円から数百万円を要するケースもあります。
3-3.表面波探査法
表面波探査法は、
・振動を発生させる起振器
・振動を捉える検出器
を地表面に設置します。
起震器により発生させた振動が地中に伝わり、
・検出器により振動を捕捉
・振動伝達速度を測定
することにより、地盤の強度を分析します。
具体的な土質や土層を調査することはできませんが、地盤の硬さを調査する手段として、他の調査方法よりも正確に把握することができます。
この測定方法は、
・調査担当者の技量
・測定器(起震器・検出器)の設置方法
・地中の空洞や埋設物
などにより、測定結果に影響を与えます。
短期間で測定可能ですが、試験費用はSWS試験と比較しますと高くなります。
4.地盤調査の期間
地盤調査に要する時間は、どの工法を採用するかにより異なります。
一戸建住宅の地盤調査の場合、最も簡易でスピーディに地盤調査を行えるSWS試験であれば、1箇所に要する調査時間は、30分~1時間程度です。
測定箇所を5箇所に設定することが多くなりますが、3~5時間で済み約半日となります。
その他の調査方法の場合、SWS試験よりも時間はかかりますが、一戸建住宅の地盤調査の場合、目安として4~8時間程度と約1日となります。
ただし、どの地盤調査方法でも
・調査当日の天候状況
・調査地点の敷地状況
(敷地形状・傾斜地など)
・調査担当者の技量
などにより、調査時間は前後します。
地盤調査そのものは、調査担当者が現場において器材を設置し、調査を実施するだけとなりますので、建築主の立会は不要です。
一般的な一戸建住宅の場合、上記で解説した地盤調査の内容を、費用と期間の2点でまとめますと、下表の通りです。




5.中古住宅や建売住宅でも地盤調査は必要




将来において売主になる場合、地盤調査データは買主から必ず要求されるものと考える必要があります。
したがって、中古住宅や建売住宅でも、地盤調査は必要です。
5-1.中古住宅の場合
中古住宅の場合、売主が建物を新築する際に地盤調査を行っていれば、地盤調査報告書が残っているはずなので、その確認をすることが大切です。
中古住宅の築年数が30年以上になるなど、かなり経過している場合には、地盤調査を行っていないケースもあります。
地盤調査を行っていたとしても、間違って処分してしまったなど、既に残っていないケースもあります。
中古住宅を購入する際、先ずは売主に地盤調査報告書の有無を確認し、あれば提示をしてもらい、内容を確認する必要があります。
無い場合には、現状有姿(現状の土地・建物での引渡し)で売買する契約が多くなります。
売主が地盤調査を、費用をかけて売却時に行うケースはありません。
買主が役所調査やWEB調査などで、近隣物件の地盤データを収集するなどして、地盤強度を推測する必要があります。
売主の了解を得られれば、購入前に敷地内の1箇所を地盤調査する方法もありますが、費用は発生します。
正確な地盤情報を得ることはできませんが、地盤強度の目安がわかり、購入有無の判断材料にすることができます。




5-2.建替えの場合
自身が住んでいた住宅や相続などで引き継いだ住宅を建て替える場合、地盤調査は必要です。
古い家よりも新しく建て替える家の方が、建物そのものの重量が大きくなる傾向にあります。
仮に古い家が軟弱地盤の上に建っていて何事も無かったとしても、新しく建て替えた建物の重量により、不同沈下などを発生させることもあります。
そうなりますと修繕費用も高くなりますので、地盤調査は必須です。




瑕疵担保保険に申請する際にも、地盤調査が必要になりますので、必ず行うようにします。
5-3.建売住宅の場合
建売住宅を購入する場合、売主は建物を建てる前に地盤調査を行っています。
地盤調査報告書の提示を依頼し、必ず確認を行うようにします。
仮に無い場合には、その立地での建売住宅購入は見合わせた方が良策といえます。
売主の姿勢として、建物の安全性に対する配慮が不足していると思われるからです。
また、建売住宅購入後、数年後から十数年後には、逆に売却する可能性があります。
その際、将来の買主から必ず地盤調査報告書の提示を要求されるものと準備しておく必要があります。
6.まとめ
以上、
- 地盤調査の概要
- 地盤調査の目的
- 地盤調査の種類と費用
- 地盤調査の期間
- 中古住宅や建売住宅でも地盤調査は必要
について解説しました。
地盤調査は、建物基礎形状の決定に大きな要因となる土質・土層などのデータを提供してくれる重要な調査です。
地盤調査結果により基礎形状が決まり、建物の耐震性・耐風性・耐水性に大きな影響を与えます。
また、将来において建物を売却する際、地盤調査報告書の有無が売買に影響を及ぼします。
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