平成31年4月に総務省統計局は、
「平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要」
によりますと、
・空き家数:846万戸
・空き家率:13.6%
と公表しました。
人口減少に伴い、今後も空き家の増加が見込まれます。
その対策として、空き家率の高い市区町村を中心として、自治体ごとに空き家バンクが造られてきました。
「『空き家バンク』って何だろうか?」
「空き家を所有しているが、活用できるのだろうか?」
と、疑問に感じられている方はいませんか?
実は、これまで空き家情報の利用・登録方法などが自治体ごとに異なり、利用者から改善の要望が上がったことを受け、国土交通省主導により統合して利用し易くなりました。
この記事では、
- 「空き家バンク」とは?
- 「LIFULL HOME’S 空き家バンク」の概要
- 「at home 空き家バンク」の概要
- 「空き家バンク」を活用して空き家再生事業
について解説します。
空き家バンクの特徴を知ることができ、活用することにより、
・空き家再生
・空き家購入
・空き家売却
などを図ることができます。
1.「空き家バンク」とは?
「空き家バンク」に関連して
- 全国の空き家の状況
- 空き家等対策の推進に関する特別措置法
- 空き家バンクとは?
- 空き家バンクへの自治体参加状況
について解説します。
1-1.全国の空き家の状況(※1)
空き家数の推移を見ますと、これまで一貫して増加が続いています。
昭和63年から平成30年までの30年間で、452万戸(114.7%)の増加となっており、倍増していることがわかります。
ただし、平成27年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が制定されたこともあり、空き家率の伸びは、鈍化する傾向にあります。
空き家数は、
・平成25年:820万戸(13.5%)
・平成30年:846万戸(13.6%)
と、5年間で26万戸(3.2%)増加し、過去最高を更新し続けています。
平成30年10月1日現在における日本の総住宅数は、6,242万戸あり、平成25年と比較して179万戸の増加です。
1-2.「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(※2)
「空き家対策の推進に関する特別措置法」が、平成26年に成立し、平成27年に施行しました。
通称「空き家法」ともいわれています。
この法律策定により、以下のことができるようになりました。
- 空き家への立ち入りによる実態調査
- 空き家の所有者に対する管理・指導
- 空き家の跡地の活用促進
- 適切な管理がなされていない空き家を「特定空き家」(*1)に指定
- 「特定空き家」に対して、助言・指導・勧告・命令が可能
- 命令に従わない場合、
・固定資産税の特例の解除
・罰金、撤去などの行政代執行
が可能 - 行政代執行により家屋が撤去された場合、撤去費用は所有者が負担
近隣住民へ悪影響を及ぼしている空き家に対して、この法律を適用することにより、長年放置され続けてきた空き家問題に対して、一定のメスを入れることが可能となりました。
なお、空き家問題については、下記の記事をご覧ください。
1-3.「空き家バンク」とは?(※3,4,5)
空き家の有効活用促進を目指し、中古住宅流通を活性化させる取組みも進んでいます。
その代表的な取り組みとして、「空き家バンク」があります。
1-3-1.設立経緯
「空き家バンク」は、令和元年10月実施アンケート(国土交通省)によりますと、
- 全自治体の約7割(1,261自治体)が設置済み
- 未設置の自治体のうち、169自治体が準備中又は今後設置予定
など、各地域において、空き家対策の取組が進んでいます。
しかし、自治体ごとに各々設置した場合、
・開示情報の項目が異なり、分かりづらい
・検索が難しい
などの課題も浮き彫りとなりました。
1-3-2.「全国版空き家・空き地バンク」の構築
国土交通省は、各自治体が個々の空き家バンクに掲載している空き家等の情報について、自治体を横断して簡単に検索できるように「全国版空き家・空き地バンク」(以下、全国バンク)を構築しました。
平成29年10月より、公募により選定した2事業者
・ (株)LIFULL
・アットホーム(株)
が試行運用を開始します。
準備が整った自治体から順次掲載を進め、システムの改善等を行った上で、平成30年4月より本格運用を開始しました。
1-3-3.全国バンクの特徴
平成31年1月には、全国に点在する公的不動産(以下、PRE)について、
・一覧性をもって検索・表示可能
・PRE特集ページを作成
など,PREの活用を検討する事業者等に対する情報提供の充実化を図っています。
また、空き家の流通・利活用に資する各自治体の支援制度
・住宅購入に係る奨励金
・子育て応援手当
・住まい探しの経費補助
などの情報の充実化も図っています。
さらに、全国版バンク内に、
・空き家等の情報
・物件周辺のハザード情報
・地形情報
・生活支援情報
などの関連情報を地図上で集約し、重ねて表示できる機能が設けられています。
1-4.「空き家バンク」への自治体参加状況(※6、7)
運用状況は、
- 令和3年6月末日時点で、819自治体が参加
- 572自治体が、物件情報を掲載中
です。
出所:国土交通省(※6)
全国版バンクへの全国平均参加率は、46.9%です。
都道府県別の市区町村ごとの参加率は、
- 1位:富山県:100%
- 2位:栃木県:92.0%
- 3位:佐賀県:85.0%
- 4位:滋賀県:84.2%
- 5位:大分県:83.3%
- 6位:兵庫県:70.7%
- 7位:石川県:68.4%
となります。
(R3.6月末)時点
出所:国土交通省(※7)
成約実績ですが、約8,200件の物件が、成約済です。(令和3年6月末日時点)
2.「LIFULL HOME’S 空き家バンク」の概要
WEBサイト(※8)
「LIFULL HOME’S 空き家バンク」に関し、
- 運営会社
- 空き家バンクの設立経緯と参画・利用状況
- 掲載料、利用料
- ニーズに合わせた検索軸
- コンテンツも充実
について解説します。
2-1.運営会社
運営会社である株式会社LIFULLは、日本最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」を運営している会社です。
2-2.空き家バンクの設立経緯と参画・利用状況
空き家バンクの設立経緯は、
- 2017年6月:国土交通省のモデル事業に採択
- 2018年4月:本格運用開始
です。
2020年4月時点で、
- 自治体の参画数は、591自治体
- 月間訪問者数は、12万人超
です。
2-3.掲載料、利用料
掲載料・利用料無料(※8)
2-4.ニーズに合わせた検索軸
WEBサイトのトップページには、
・公的不動産
・農地付き空き家
・店舗付き物件
の特集ページへのリンクが設置されています。
ニーズに合わせた検索軸(※8)
2-5.コンテンツも充実
読み物コンテンツも充実しています。
・プロジェクトのきっかけ
・物件との出会い
・コスト感
など、インタビュー形式で紹介されています。
みんなの家!活用Collection(※8)
「みんなの空き家!活用Collection」は、
各地域の空き家を活用したプロジェクト紹介記事をシェアしていくサイトです。
トップページからリンクされています。
・物件情報
・活用アイデア・ノウハウ
などの
・情報蓄積
・共有
にも注力されています。
3.「at home 空き家バンク」の概要
WEBサイト(※9)
「at home 空き家バンク」に関し、
- 運営会社
- 空き家バンクの参画・利用状況
- 空き家バンクの特徴
- 豊富なコンテンツ
- 特集コンテンツが充実
について解説します。
3-1.運営会社
3-2.空き家バンクの参画・利用状況
2021年3月時点で、
・自治体の参画数は、535自治体
・公開物件数は、5,533件
・月間訪問者数は、
・2020年2月: 64万PV
・2021年2月:123万PV
1年で約1.9倍に増加中
です。
よく閲覧されているWEBサイトといえます。
3-3.空き家バンクの特徴
物件情報公開を始めとして、様々なサービス提供を行っています。
3-3-1.情報公開
- 全国の空き家・空き地物件情報を一元管理
- 古民家特集など多彩なコンテンツを用意
- 「おためし移住情報」など、物件以外の特集も設置
- スマートフォンにも対応
3-3-2.「自治体専用ページ」提供
- 各自治体専用のアピールサイトを提供
- 地域の特徴や助成金制度など、独自の情報公開が可能
- 公開内容などは、各自治体で自由に編集が可能
- スマートフォンにも対応
3-3-3.物件情報の登録負荷軽減
- 物件登録システムは、アシスト機能付き
3-3-4.自治体と提携した事業者などからの物件公開に対応
- 不動産会社などの提携事業者にも物件登録システムを提供
- NPO法人や住宅供給公社、第三セクターなどにも対応
3-3-5.サイトの利用は全て無料
- 「アットホーム 空き家バンク」
- 「自治体専用ページ」
- 「各種コンテンツ」
→ いずれも無料で利用
3-4.豊富なコンテンツ
集客アップにつながる豊富なコンテンツを準備
豊富なコンテンツ(※9)
3-5.特集コンテンツが充実
例えば、
- 「古民家で暮らす!」
- 「テレワークな暮らし」
- 「温泉が好きだ!」
- 「田舎暮らしがしたい!」
- 「補助がある物件特集」
- 「眺望良好物件特集」
- 「リフォーム物件特集」
- 「全国の農地付物件特集」
- 「全国の店舗付物件特集」
など、物件の特徴に応じた特集コンテンツを用意
特集コンテンツ(※9)
4.「空き家バンク」を活用して空き家再生事業
Livinganywhere Commons 横瀬
(JAの社屋跡を活用)
不動産投資家の間では、
・中古アパート
・中古マンション
などの売却価格が、高止まりしている影響で投資利回りが悪くなり、中古物件への投資に躊躇している傾向にあります。
その様な状況下、築古空き家に目を付け、高利回りの戸建て賃貸として、再生する動きが増加しています。
4-1.「空き家バンク」内で物件購入
空き家の特徴として、
・物件数が豊富
→ 多すぎて問題発生
→ 空き家バンク誕生
・築古物件が多い
・価格が安い
・劣化損傷
→ リフォームが必要
などです。
4-1-1.空き家再生事業のポイント
空き家再生事業のポイントは、
・価格が安い
・リフォームが必要
を天秤にかけ、トータルで安く抑えて購入できるか否かです。
トータルで、総費用が高くなりますと、家賃を高く設定する必要があり、現実的ではありません。
賃貸事業の場合、空き家購入価格の目安は、出口戦略も考慮しますと、高くても土地の評価額以下で購入する必要があります。
また、賃貸需要が見込める地域である必要があります。
入居者がいなければ、賃貸事業になりません。
4-1-2.空き家バンクで、入居者募集可能
空き家バンクは、物件の売買情報だけではありません。
賃貸情報も豊富にあります。
したがって、空き家を購入して再生した後に、空き家バンクに登録して、賃貸案内が可能です。
4-2.融資は日本政策金融公庫を活用
政府系の金融機関である日本政策金融公庫は、融資する事業が、社会貢献につながるという公益性・公共性に重点を置きます。
したがって、融資対象となる不動産賃貸事業におきましても、公益性・公共性をもった事業目的が記入されますと、重要視されます。
4-2-1.空き家再生に最適
例えば、
「中古戸建てをリフォームすることにより、賃貸戸建てとして再生させ、空き家対策に貢献する」
などです。
・増加する空き家問題
・高齢者の入居問題
を解決するなど、公益性・公共性をアピールする事業目的を記入しますと、融資審査での印象が良くなります。
4-2-2.日本政策金融公庫に向いている物件の特徴
日本政策金融公庫の融資に向いている物件の特徴として、
- 築年数を重視しない
- 収益性(利回り)を重視
- 購入価格を重視:比較的安価な物件
などが挙げられます。
4-2-3.日本政策金融公庫のメリット・デメリット
以上を鑑みますと、築古空き家再生と日本政策金融公庫の融資とは、
・事業目的
・融資規模
・収益性
という観点で、相性が良いと考えられます。
なお、日本政策金融公庫については、下記の記事をご覧ください。
4-3.サブスク賃貸
サブスク賃貸は、コスパ良く水道光熱費も不要で、特に若い世代の利用者が増加傾向にあります。
4-3-1.サブスク賃貸の魅力
サブスク賃貸の魅力として、
- ライフプランに合わせて自由に移住可能
- 引っ越し・移住に手間がかからない
- 定額制にて利用
などです。
4-3-2.サブスク賃貸の運営会社
様々なタイプのサブスク住宅がありますが、運営会社も多数あります。
その中で、主に空き家を利用しているサブスク住宅の運営会社には、
・LAC(LivingAnywhere Commons)
・ADDress
・Xross house
・HafH
・SANU 2nd Home
・unito
などがあります。
例えば、下の写真は、JA社屋跡を有効活用したサブスク賃貸です。
写真4.「LAC横瀬」の宿泊部屋(右写真)
(筆者撮影)
埼玉県横瀬町にありますが、人気の高いサブスク賃貸となっています。
実際に筆者も宿泊しましたが、スタッフが非常に良いです。
5.まとめ
以上、
- 「空き家バンク」とは?
- 「LIFULL HOME’S 空き家バンク」の概要
- 「at home 空き家バンク」の概要
- 「空き家バンク」を活用して空き家再生事業
について解説しました。
空き家バンクの利用者(PV数)は、毎月増加傾向にあります。
原因として、
- テレワークの普及により、地方や郊外に住宅を求める
- 地方への移住者が増加傾向
- マルチハビテーションの増加
- 手頃な価格帯での物件が多い
- 空き家再生事業(賃貸)の増加
などが考えられます。
この記事では、特に空き家再生事業を取り上げましたが、様々な活用が考えられます。
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7.参考・引用WEBサイト
※1 「平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要」
(平成31年4月26日) 総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/g_gaiyou.pdf
※2 「空家等対策の推進に関する特別措置法の施工状況等について」
(平成30年3月31日時点) 国土交通省・総務省
https://www.mlit.go.jp/common/001238381.pdf
※3 「全国版空き家・空き地バンク」の更なる情報の充実化!」
(平成31年3月29日) 国土交通省 不動産・建設経済局不動産業課
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000189.html
※4 「空き家・空き地バンク総合情報ページ」
国土交通省不動産・建設経済局不動産業課
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000131.html
※5 「全国版空き家・空き地バンクについて」
国土交通省不動産・建設経済局不動産業課
https://www.mlit.go.jp/common/001416730.pdf
※6 「全国版空き家・空き地バンク 参加自治体・登録物件数 推移」
国土交通省不動産・建設経済局不動産業課
https://www.mlit.go.jp/common/001416731.pdf
※7 「都道府県別 全国版空き家・空き地バンク 参加率(R3.6月末)時点」
国土交通省不動産・建設経済局不動産業課
https://www.mlit.go.jp/common/001416732.pdf
※8 「LIFULL HOME’S 空き家バンク」
株式会社LIFULL
https://www.homes.co.jp/akiyabank/
※9 「at home 空き家バンク」
アットホーム株式会社
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