「空き家問題」は、メディアにも取り上げられ、深刻な状況であることが報道されています。
空き家率が高くなりますと、自治体の存続すら危ぶまれる事態となります。
「実家が空き家になっており、処分をどうすればよいのだろうか?」
「隣が空き家で、野良猫が住みつき、鳴き声がうるさい!」
と、お悩みの方はいませんか?
実は、様々な制度が講じられています。
この記事では、
- 「空き家問題」の現況
- 「空き家問題」の原因
- 「空き家問題」のリスク・デメリット
- 「空き家問題」の解決策
- 「空き家等対策計画」の策定状況
について解説します。
法律の策定や制度の充実など、「空き家問題」を解決する方策を知ることができます。
1.「空き家問題」の現況

全国の空き家数は、年々増加し、
・空き家数
・空き家率
ともに過去最高を更新し続けています。
空き家問題は、空き家率が限界を超えますと、自治体の存在基盤が危うくなる危険性を秘めています。
その限界は、30%といわれます。
ちなみに、北海道夕張市が経済破綻した時点での空き家率は33%でした。
地方の自治体の中には、空き家率が30%に近付きつつある自治体があります。
その解決への取組みは、緊急を要します。
1-1.空き家問題(※1)
総務省統計局が、公表(平成31年4月26日)した資料に基づき、空き家の種類・傾向・戸数・割合をまとめますと、下表の通りです。

(平成 30 年 10 月)※1
*1 賃貸用住宅
新築や中古の賃貸住宅(アパート・マンション・戸建てなど)で空き家になっている住宅
*2 売却用住宅
新築や中古の売却のために空き家になっている住宅(マンション、戸建てなど)
*3 二次的住宅
別荘や残業などで遅くなった場合に、たまに寝泊まりする住宅
*4 その他の住宅
「賃貸用住宅」、「売却用住宅」、「二次的住宅」以外の住宅
・転勤・入院などのため居住世帯が長期に亘り不在の住宅
・建替えなどのために解体することになった住宅
・空き家の区分の判断が困難な住宅
など

1-2.空き家数は増加傾向(※1)
空き家数は、
・平成30年:846万戸(13.6%)
・平成25年:820万戸(13.5%)
と、5年間で26万戸(3.2%)増加し、過去最高を更新し続けています。
平成30年10月1日現在における日本の総住宅数は、6,242万戸あり、平成25年と比較して179万戸の増加です。
空き家数の推移を見ますと、これまで一貫して増加が続いています。
昭和63年から平成30年までの30年間で、452万戸(114.7%)の増加となっており、倍増していることがわかります。
ただし、平成27年に「空き家対策特別措置法」が制定されたこともあり、空き家率の伸びは、鈍化する傾向にあります。

(昭和 38 年~平成 30 年) ※1
1-3.空き家率:都道府県別ランキング(※1)
空き家率を都道府県別に見てみますと、
高い都道府県は、
1位:山梨県 :21.3%
2位:和歌山県:203%
3位:長野県 :19.5%
4位:徳島県 :19.4%
です。

空き家率の高い上位10県の中で、空き家率の増加傾向が続いているのは、8県です。
低い都道府県は、
1位:埼玉県 :10.2%
1位:沖縄県 :10.2%
3位:東京都 :10.6%
4位:神奈川県:10.7%
です。

空き家率の低い上位10都府県の中で、空き家率の減少傾向が続いているのは7都府県です。
これより、空き家率は、地域格差が年々広がる傾向にあります。
2.「空き家問題」の原因

「空き家問題」が起きる原因は、
・少子高齢化
・相続問題・税制問題による放置
・空き家放置
・新築住宅と中古住宅の需要格差
・借地問題・地価下落・登記問題
などがあります。
2-1.少子高齢化
高齢者が、身体が不自由になることにより、
・老人ホームや介護施設などへの入所
・子供の家に転居
する場合が増加します。
空き家が増える原因の一つです。

今後、団塊の世代が後期高齢者になるため、その傾向はいっそう大きくなります。
2-2.相続問題・税制問題による放置
所有者が、
・空き家を売却
・空き家の建て直し
・空き家を解体して更地に
するなど、何も手を打たずに放置している場合があります。
2-2-1.相続問題:共有名義による放置
親が亡くなり、相続が発生しますと、法定相続人による遺産分割協議が必要です。
意見が対立してまとまらず、苦肉の策として共有名義にする場合があります。

共有名義にしますと、売却するにしても解体するにしても、共有名義人全ての同意が得られないと何もできません。
合意形成に至りませんと、結果として空き家の状態で放置されることになります。
2-2-2.固定資産税による放置
また、固定資産税・都市計画税の問題があります。
土地に家屋などの建物が建っていますと、土地の固定資産税は、敷地面積:200㎡までは6分の1に軽減されます。
それに家屋の固定資産税が加わりますが、経年劣化とともに家屋の評価額が下がり続け、固定資産税も下がります。
家屋を解体し、土地を更地状態にしますと、土地の固定資産税は元に戻り6倍になりますが、家屋の固定資産税はかかりません。
家屋が建っている状態と更地の状態を比較しますと、一般的に更地の状態の方が、固定資産税は高くなります。

したがって、納税額が増加するのを避けるために、家屋を放置し続けることになり、空き家の原因の一つとなります。

上記にもあるように、
・高齢者の転居
・相続のもつれ
・固定資産税の問題
など、手続きの煩わしさから、空き家のまま放置している場合もあります。
中には、所有者の物置代わりや商売上での倉庫代わりとして、人が住むことなく利用されている場合もあります。
2-3.新築住宅と中古住宅の需要格差
日本では、
- 新築住宅に対する人気が高く、需要も高い
- 中古住宅に対する人気は低く、需要も低い
ことが原因の一つとなっています。

人口減少が顕著となる中、中古住宅は増加し続け、売却しても売れ残りが多数出るのは、当然の結果です。
空き家が増加する大きな原因となります。
2-4.借地問題・地価下落・登記問題
他にも様々な問題により、空き家が発生します。
2-4-1.借地問題
都市部では、特に1990年前後のバブル経済までは、
・地価が高騰し続ける
・土地の購入がままならない
などが理由により、借地による住宅建設が進みました。
しかし借地は、建替えやリノベーションなどを行う前に土地所有者の承諾を得る必要があります。
その調整が、スムースになされずに、放置される住宅が多くなります。
改善されない住宅に居住する人は、徐々に減少し、空き家が目立つようになります。
2-4-2.地価下落
都市部においては、バブル経済崩壊から約30年経過しているとはいえ、地価が下落し続けている地域がいまだにあります。
評価の低い土地が活用されることはなく、その上に建つ家屋が取引きされないまま放置され続けることになります。

2-4-3.登記問題
家屋の所有者が亡くなった場合、相続による所有者移転登記がなされます。
しかし、遺産分割協議の不調や相続人が皆無などの場合、所有権移転登記がなされないまま放置されることがあります。
所有者が不明の土地建物となり、誰も手をつけられずに空き家となります。
なお、所有権移転登記については、下記の記事をご覧ください。

3.「空き家問題」のリスク・デメリット

「空き家問題」のリスク・デメリットには、
・景観の悪化
・犯罪の増加
・機会損失
などがあります。
3-1.景観の悪化
空き家を放置し続けますと、家屋自体は経年劣化し、外観は損傷や汚れなどが目立つようになります。
家屋内部におきましても、長期間、換気をしないで放置し続けますと、
・カビ
・ダニ
・ノミ
・シロアリ
などの害虫が発生し、損傷や汚れなどが目立つようになります。

なお、シロアリ予防については、下記の記事をご覧ください。

また、家屋まわりの庭におきましても、雑草が生い茂り、ツタなどの植物が家屋を覆いつくす状態になります。
さらに、放置し続けますと、家屋の強度が劣化し、倒壊の危険性があります。

一方、空き家に近隣の野良犬や野良猫の溜り場になる可能性もあります。
見た目や景観が悪くなるばかりでなく、
・鳴き声による騒音問題
・糞・尿による悪臭問題
に発展する可能性もあります。

3-2.犯罪の増加
空き家であることが知られますと、管理されていない状態であれば、犯罪者やホームレスなどの
・不法侵入
・不法占拠
・反社会勢力のアジト化
といった事態を生じる可能性が高まります。

ホームレスが長居することにより、ゴミが家屋内に散乱する事態となることもあります。
また、外部から粗大ゴミを持ち込まれる可能性もあります。

さらに、最悪の場合、放火による火災に至る場合も実際に起きています。
3-3.機会損失
空き家のままで放置されますと、その土地や家屋が有効活用されないため、機会損失を起こすことになります。
本来であれば、人が居住することにより、立地する市区町村に住民税などが納税されます。
しかし、空き家であると、住民税の納税はありません。
また、空き家がある場合、近隣の土地に対して住宅の建築を検討している人が、「犯罪の温床になっていないか?」などの警戒感を抱き易くなります。
その土地での建築を断念して、周辺の発展の阻害要因になることもあります。
4.「空き家問題」の解決策

「空き家問題」の解決策として
・「空き家法」の活用
・「空き家バンク」の活用
・「空き家管理サービス」の活用
・「空き家」を民泊として活用
・「空き家」を売却処分
などがあります。
4-1.「空き家法」の活用(※2)
「空き家対策の推進に関する特別措置法」が、平成26年に成立し、平成27年に施行しました。
通称「空き家法」ともいわれています。
この法律策定により、以下のことができるようになりました。
- 空き家への立ち入りによる実態調査
- 空き家の所有者に対する管理・指導
- 空き家の跡地の活用促進
- 適切な管理がなされていない空き家を「特定空き家」に指定
- 「特定空き家」に対して、助言・指導・勧告・命令が可能
- 命令に従わない場合、
・固定資産税の特例の解除
・罰金、撤去などの行政代執行
が可能 - 行政代執行により家屋が撤去された場合、撤去費用は所有者が負担
近隣住民へ悪影響を及ぼしている空き家に対して、この法律を適用することにより、長年放置され続けてきた空き家問題に対して、一定のメスを入れることが可能となりました。
4-2.「空き家バンク」の活用(※3)
これまでは各自治体が、空き家バンクを個別に運営してきましたが、国土交通省が一元化して取組むことになりました。
それが「全国版空き家・空き地バンク」(以下、全国版バンク)です。
全国版バンクは、全国に点在する空き家などの情報を簡単に検索することができます。
平成30年4月より、公募によって選定された2社
・(株)LIFULL
・アットホーム(株))
により運営されています。
平成31年2月時点で、
- 全国の603の自治体が全国版バンクに参加
- 9,000件を超える空き家などの情報が掲載
されています。
成約に至った空き家数は、1,900件を超えています。

また、空き家の流通・活用に関する各自治体の支援制度
・住宅購入に対する支援金
・子育て応援手当
・住まい探しの経費補助
などの情報の充実化を図っています。
さらに、「地方に移住したい!田舎暮らしがしたい」などの要望が多様化する中で、全国版バンクを通してのマッチングの促進を図っています。
なお、空き家バンクの詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。

4-3.「空き家管理サービス」の活用(※4)
所有する空き家が遠方にあり、仕事が忙しくてなかなか様子を見に行くことができない場合、「空き家管理サービス」を活用する方法もあります。
「NPO法人空家・空地管理センター」では、空き家の管理が高額になり業者に委託できない場合に、「100円管理」というメニューがあります。

一方、
- 将来に自身が居住する可能性がある場合
- 賃貸戸建てとして検討している場合
- 高く売却したい場合
には、「しっかり管理」というメニューがあります。
なお、空き家管理サービスを提供する5社のサービス内容については、下記の記事をご覧ください。

4-4.「空き家」を民泊として活用
シェアリングエコノミーは、モノ・場所・スキルといった遊休資産を、多くの人と共有・交換することで、利用する経済の形式です。
空き家という遊休資産を、多くの人とシェアすることで、活かす方法の一つが民泊です。
例えば、空き家として放置されていた一軒家を改装して、観光客用の宿泊施設として再生させ、収入を得ることができます。
シェアリングエコノミーの一つのビジネスモデルです。

しかし、空き家所有者が、いきなり宿泊業を営むことは困難です。
そこで、民泊における宿泊業を代行してくれる業者に委託します。
多くの民泊代行業者が存在しますので、
・空き家の立地
・空き家の改装費
・宿泊料金
などの条件が折り合えば、地域の空き家問題の解決策として、有力視されます。
4-5.「空き家」を売却処分
空き家のまま所有しているよりは、売却した方が、必要経費などもかからず、得策となる場合もあります。
所有し続けても、
・固定資産税・都市計画税
・水道光熱費の基本料金
は毎年かかります。
特に、長期間放置し続けてきた空き家の場合、近隣住民に対して迷惑をかけている可能性もあります。
また、「空き家対策特別措置法」により「特定空き家」に指定されますと、固定資産税の「小規模住宅用地の特例」が無くなり、土地の
・固定資産税は6倍
・都市計画税は3倍
になります。
売却方法も様々な方法があります。
地元の不動産会社に依頼する方法もあります。
上記で説明した「全国版空き家・空き地バンク」に登録しますと、売却しにくい家屋でも売却できる場合があります。
また、WEBサイト上において、「不動産売却価格無料査定サイト」が、多数運営されています。
それらを活用して売却してみるのも良策といえます。
なお、不動産売却価格無料査定サイトについては、下記の記事をご覧ください。

5.「空き家等対策計画」の策定状況

国土交通省・総務省の調査結果によりますと、全国の市区町村の空き家等対策計画の策定状況は、下表の通りです。

(平成 30 年3月 31 日時点) ※2
上表から、空き家等対策計画が、
・策定済みの市区町村:45%
・策定予定の市区町村:43%
・ 合 計 :88%
になり、大半の市区町村が積極的に取組んでいる様子がわかります。
「空き家問題」は、全国に及んでいることが、数字で読み取ることができます。
また特定空き家等に対する措置の実績は、下表の通りです。

(平成 30 年3月 31 日時点) ※2
年々、市区町村による助言・指導・勧告・命令・代執行・略式代執行の措置件数は増加しており、策定計画が浸透していく様子が数字で読み取れます。
6.まとめ
以上、
- 「空き家問題」の現況
- 「空き家問題」の原因
- 「空き家問題」のリスク・デメリット
- 「空き家問題」の解決策
- 「空き家等対策計画」の策定状況
について解説しま した。
空き家を放置し続けますと、様々な悪影響が生じます。
それらを防止するために、
・空き家バンク
・空き家管理サービス
などを活用し、空き家の活用を図る必要があります。
7.お役立ち情報案内
住宅に関するお役立ち情報を案内します。
ご活用ください。
7-1.【タウンライフ不動産(売却)】無料申込
◆サービス概要◆
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7-2.【タウンライフ土地活用】無料/申込
◆サービス概要◆
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「費用・見積り」
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7-3.【解体工事110番】どんな構造の建物でもお任せください!
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脳科学に基づき暗記を補助する便利なツールや、記憶が消えないうちに定着を促進する問題練習機能も充実しており、無理なく進めて合格できる実力がつきます。
8.参考・引用WEBサイト
※1 「平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要」
(平成31年4月26日) 総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/g_gaiyou.pdf
※2 「空家等対策の推進に関する特別措置法の施工状況等について」
(平成30年3月31日時点) 国土交通省・総務省
https://www.mlit.go.jp/common/001238381.pdf
※3 「全国版空き家・空き地バンク」の更なる情報の充実化!」
(平成31年3月29日) 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000189.html
※4 「管理サービス内容・料金」
NPO法人空家・空地管理センター
https://www.akiya-akichi.or.jp/kanri/service/
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