渡し舟(わたしぶね)は、河川や港湾、湖沼などの両岸を往復して人や物資を運ぶ船もしくは航路です。
渡船(とせん)とも言います。
渡し舟に乗降する場所を
・渡し場(わたしば)
・渡船場(とせんじょう、とせんば)
といいます。
「海・川・湖沼の渡し舟・水上バス」シリーズでは、全国の渡し舟や水上バスを紹介します。
今回は、水都大阪の渡し舟「甚兵衛渡船場」を紹介します。
1.水都大阪の渡船場
大阪市内には8カ所の渡船場があります。
- 天保山(てんぽうざん)渡船場
- 甚兵衛(じんべえ)渡船場
- 千歳(ちとせ)渡船場
- 落合上(おちあいかみ)渡船場
- 落合下(おちあいしも)渡船場
- 千本松(せんぼんまつ)渡船場
- 船町(ふなまち)渡船場
- 木津川(きづがわ)渡船場
運営は大阪市が行っており、乗船料は無料です。
1-1.大坂渡船場の位置図
上記8カ所の渡船場位置は、下図の通りです。
なお、天保山渡船場については、下記の記事をご覧ください。
1-2.大阪渡船場の経緯
大阪は数多くの川が流れ、「水の都」と呼ばれた大阪には、人々の往来のための渡船場が各所にありました。
当初民間によって営まれていた渡船は、明治24年に大阪府が「渡船営業規則」を定め「監督取締り」を行います。
明治40年には
・安治川
・尻無川
・淀川筋
の29渡船場については市営事業として市が管理しました。
大正9年4月、旧道路法の施行により渡船は無料となります。
昭和7年4月以降はそれまでの請負制を改め、ほとんどが市の直営方式になります。
昭和10年頃には、
・渡船場31か所
・保有船舶数69隻
・機械船:32隻
・手漕ぎ船:37隻
・年間利用者
・歩行者:約5,752万人
・自転車等:約1,442万台
を数えました。
その後、橋梁の架設など道路施設の整備に伴って、渡船場は次第に廃止されました。
昭和20年には、戦災によってその多くを失いました。
昭和23年に15か所で再開されましたが、戦災復興とともに道路をはじめとする都市施設が整備されます。
モータリゼーションの進展もあって、渡船の利用は次第に減少しました。
昭和53年には
・渡船場:12か所
・利用者数:約250万人
令和4年度では、
・渡船場:8か所
・利用者数:約152万人
になっています。
2.甚兵衛(じんべえ)渡船場の概要
今回は、甚兵衛渡船場について案内します。
2-1.甚兵衛渡船場の位置図
甚兵衛渡船場は、大阪市内を流れる尻無川中流部に位置します。
・泉尾側 大阪市大正区泉尾7丁目13-32
・福崎側 大阪市港区福崎1丁目3-50
とを結びます。
尻無川水門の下流側に位置します。
甚兵衛渡船場の航空写真を挙げます。
2-2.甚兵衛渡船場の経緯
昔、尻無川の堤は紅葉の名所でした。
「摂津名所図会大成」に
『大河の支流にして江之子じまの北より西南に流れて、寺島の西を入る後世この河の両堤に黄櫨(はぜのき)の木を数千株うえ列ねて実をとりて蝋(ろう)に製するの益とす
されば紅葉の時節にいたりては河の両岸一圓の紅にして川の面に映じて風景斜ならず
騒人墨客うちむれて風流をたのしみ酒宴に興じて常にあらざる賑ひなり
河下に甚兵衛の小屋とて茶店あり
年久しき茅屋にして世に名高し』
とあり、甚兵衛によって設けられた渡しにある茶店は「蛤小屋」と呼ばれて名物の蜆、蛤を賞味する人が絶えなかったいいます。
現在も甚兵衛渡船場は健在で、大正区泉尾7丁目と港区福崎1丁目を結び(岸壁間94m)、朝のラッシュ時は2隻の船が運行します。
令和4年度現在、1日平均1,004人が利用します。
2-3.甚兵衛渡船場の乗船場
乗船場は、尻無川を挟んで、
・右岸(北西側):港区福崎側
・左岸(南東側):大正区泉尾側
にあります。
2-3-1.港区福崎側(右岸・北西側)の乗船場
港区福崎側乗船場の様子です。
2-3-2.大正区泉尾側(左岸・南東側)の乗船場
大正区泉尾側乗船場の様子です。
2-3-3.乗船場の最寄りバス停
甚兵衛渡船場の最寄りバス停は、
・港区福崎側
JR・大阪メトロ「弁天町駅」から
大坂シティバス51系統(天保山行き)
「福崎一丁目」下車、南東へ徒歩約5分
・大正区泉尾側
JR・大阪メトロ「大正駅」から
大坂シティバス87系統(鶴町四丁目行き)
98系統(大正区役所前行き)
「泉尾四丁目」下車、西へ徒歩約5分
となります。
出所:大阪市建設局(※3)
2-4.甚兵衛渡船場の時刻表
渡し舟は、基本的に泉尾側(左岸・南東側)の乗船場に停泊しています。
対岸側の運航時間は渡船場により異なりますが、対岸側には約1から2分後到着し、お客様が乗船次第すぐ出航する事となっております。
福崎側乗船場の標準時刻表は下図の通りです。
3.実際に乗船
筆者は、甚兵衛渡船場に行き、福崎側乗船場から乗船し、泉尾側乗船場へ向かいました。
その様子を撮影しましたので、ご覧ください。
福崎側乗船場→泉尾側乗船場
尻無川水門も撮影できました。
4.まとめ
以上、
- 水都大阪の渡船場
- 甚兵衛(じんべえ)渡船場の概要
- 実際に乗船
について解説しました。
渡し舟は観光船と違い、地元に住む人たちの
・通勤
・通学
・買い物
などの交通手段として利用されています。
それ故に、渡し舟は地域の顔でもあります。
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6.参考・引用Webサイト
※1 「渡船場」
大阪市建設局西部方面管理事務所河川・渡船管理事務所
https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000011244.html
※2 「渡船場マップ」
大阪市建設局西部方面管理事務所河川・渡船管理事務所
https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000011242.html
※3 「甚兵衛(じんべえ)渡船場」
大阪市建設局西部方面管理事務所河川・渡船管理事務所
https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000011251.html
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