駐車場などの更地にアパートやマンションを建築しますと、
・固定資産税
・都市計画税
の大幅な軽減措置があります。
しかし、新たにアパート・マンションを建築した場合、
「建物の固定資産税・都市計画税が加算されて、合計の税額が上がるのでは?」
と、心配されている方はいませんか?
実は、低層アパートの場合、
となることが、大半となります。
これについては、【事例3】で解説します。
この記事では、
- アパート経営による固定資産税の軽減措置
- アパート経営による都市計画税の軽減措置
- アパート経営前後の固定資産税・都市計画税の比較
- アパート経営における空家の固定資産税・都市計画税の改正
について解説します。
1.アパート経営による固定資産税の軽減措置
アパート経営を行う土地にかかる固定資産税は、更地・駐車場と比較して、
住宅1戸当たり200㎡まで、1/6
となり、大幅な減税となります。
その仕組みを解説します。
1-1.固定資産税とは?
固定資産評価額を課税標準として計算された税額を、その固定資産が所在する市区町村に納めます。
計算式は、
となります。
税率は、全国一律ではなく、1.4%~2.1%の範囲で各市区町村が条例で設定します。
また、固定資産税評価額は、3年毎に見直しをします。
1-2.固定資産税評価額
固定資産税評価額は、土地や建物などの評価方法を定めた「固定資産税評価基準」に基づき、各市町村が個別に決める評価額です。
1-3.固定資産税評価額の目安
土地の場合、地価公示価格の約70%が固定資産税評価額の目安とされています。
・市街地、村落
・面積、形状
・道路と土地の接し具合
によって、評価額が異なります。
建物の場合、新築工事金額の約30~50%が目安とされています。
建物規模・構造、築年数によって評価額が異なります。
固定資産税評価額は、各市町村にて調査可能です。
毎年変わることもありますので確認が必要です。
概略を知りたい場合には、「全国地価マップ」(※1)というサイトにて、固定資産税路線価マップが掲載されています。
それを参考にして固定資産税評価額を知ることができます。
1-4.固定資産税の軽減
土地に住宅が建ちますと、住宅用地となり、固定資産税が軽減されます。
また、新築された住宅が一定条件を満たしますと、新築後一定期間(3年~7年間)、家屋の固定資産税が軽減されます。
1-4-1.住宅用地の固定資産税の軽減
住宅用地の固定資産税は、アパート・マンションなどの住宅が建ちますと、
1戸当たり200㎡まで固定資産税が更地の場合の6分の1
になります。
1戸当たり200㎡を超える部分に対して、固定資産税は更地の場合の3分の1になります。
区 分 | 住宅用地特例率 |
小規模住宅用地 (戸数×200㎡まで) | 1/6 |
一般住宅用地 | 1/3 |
相続税評価の「小規模宅地等の特例」と固定資産税評価の「小規模住宅用地」と混同しやすいので、注意が必要です。
「小規模宅地等の特例」については、下記の記事をご覧ください。
【事例1】
1,000㎡の土地に4戸のアパートを建てた場合、固定資産税は、
・土地800㎡までが6分の1
・残地200㎡は3分の1
になります。
200㎡ ×4戸 =800㎡:固定資産税評価額は1/6
1,000㎡-800㎡= 200㎡:固定資産税評価額は1/3
1-4-2.住宅家屋の固定資産税の軽減(※2)
新築された住宅が一定条件を満たしますと、新築後一定期間、家屋の固定資産税が軽減されます。
◆条件◆
- 2024年(令和6年3月31日)までに新築された住宅であること
- 家屋床面積の1/2以上が、居住用であること
- 居住用の床面積が、以下の条件を満たすこと
・自己の居住用の場合:50㎡以上~280㎡以下
・貸家の場合 :40㎡以上~280㎡以下
◆減額される税額◆
家屋の固定資産税額の1/2を減額(ただし1戸あたり120㎡が限度)
<減額される期間>
- 一般住宅の場合 :3年間
(3階建以上の耐火・準耐火建築物は5年間) - 長期優良住宅の場合:5年間
(3階建以上の耐火・準耐火建築物は7年間)
上記の一般住宅の場合の条件をまとめますと、下表の通りです。
固定資産税の減額措置(※2)
【事例2】
令和元年にアパートを新築した場合、建物の固定資産税をシミュレーションします。
条件は下記の通りです。
・ファミリータイプ2LDK:65㎡
・木造2階建て:4戸
・アパート家屋の課税標準額:2,000万円
アパートの設定条件は、固定資産税の軽減措置の条件を全て満たしますので、
2,000万円×1.4%×1/2=14万円
新築してから3年間の固定資産税は、14万円となります。
4年目以降は、軽減措置が無くなり、28万円となります。
2.アパート経営による都市計画税の軽減措置
アパート経営を行う土地にかかる都市計画税は、更地・駐車場と比較して、住宅1戸当たり200㎡まで、1/3となり、大幅な減税となります。
その仕組みを解説します。
2-1.都市計画税とは?
市街化区域外の土地、建物や償却資産には課税されません。
計算式は、
となります。
税率は、全国一律ではなく、0.3%を上限として各市区町村が条例で設定します。
2-2.都市計画税の評価額
都市計画税の評価額は、固定資産税評価額を用います。
2-3.都市計画税の軽減
土地に住宅が建ちますと、住宅用地となり、都市計画税が軽減されます。
2-3-1.住宅用地の都市計画税の軽減
住宅用地の都市計画税は、アパート・マンションなどの住宅が建ちますと、
1戸当たり200㎡まで都市計画税が、更地の場合の3分の1
になります。
1戸当たり200㎡を超える部分に対して、都市計画税は、更地の場合の3分の2
になります。
区 分 | 住宅用地特例率 |
小規模住宅用地 (戸数×200㎡まで) | 1/3 |
一般住宅用地 | 2/3 |
2-3-2.住宅家屋の都市計画税の軽減
住宅家屋の都市計画税の軽減措置はありません。
3.アパート建築前後の固定資産税・都市計画税の比較
(ファミリータイプ)
アパート建築を行う前と、行った後の固定資産税・都市計画税の違いをシミュレーションしてみます。
【事例2】のケースを基にします。
【事例3】
令和4年にアパートを新築した場合の建物の固定資産税・都市計画税をシミュレーションします。
条件は下記の通りです。
・土地面積:800㎡(更地)
・固定資産税路線価:10万円/㎡
・ファミリータイプ2LDK:65㎡
・木造2階建て:4戸
・アパート家屋の課税標準額:2,000万円
(出所:全国地価マップ)
3-1.アパート建築前の土地の固定資産税・都市計画税
先ずは、アパート建築を行う前の土地の固定資産税・都市計画税を算出します。
土地の固定資産税評価額は、
【事例3:アパート建築前】
固定資産税評価額=800㎡×10万円/㎡=8,000万円
固定資産税=8,000万円×1.4%=112万円
都市計画税=8,000万円×0.3%= 24万円
固定資産税+都市計画税= 134万円
となります。
3-2.アパート建築後の土地・建物の固定資産税・都市計画税
アパート建築を行った後の土地・建物の固定資産税・都市計画税を算出します。
3-2-1.土地の固定資産税・都市計画税
土地の固定資産税は、軽減措置の条件を満足しますので、上記の固定資産税の1/6になります。
【事例3:アパート建築後:土地】
固定資産税=112万円×1/6=18.7万円
都市計画税=24万円×1/3=8万円
固定資産税+都市計画税= 26.7万円
3-2-2.建物の固定資産税・都市計画税
建物の固定資産税は、軽減措置の条件を満足しますので、
【事例3:アパート建築後:建物
固定資産税=2,000万円×1.4%×1/2= 14万円
都市計画税=2,000万円×0.3%=6万円
固定資産税+都市計画税= 20万円
3-2-3.土地・建物の固定資産税・都市計画税
土地と建物の固定資産税を合計しますと、
【事例3:アパート建築後:土地+建物】
固定資産税+都市計画税=26.7万円+20万円
=46.7万円
3-3.アパート建築前後の土地・建物の固定資産税・都市計画税の比較
【事例3:アパート建築前後の土地+建物
アパート建築前の固定資産税・都市計画税:134万円
アパート建築後の固定資産税・都市計画税:46.7万円
となり、この差は、87.3万円となります。
アパート建築後3年間は、毎年87.3万円の差額が発生します。
4年目以降は、建物の軽減措置が無くなりますので、73.3万円の差額となります。
この状態が長期間に及びますと、かなりの差額が生じます。
アパートの住戸数を6戸、8戸と増加して建物の固定資産税・都市計画税が増加しても、アパート経営後の固定資産税・都市計画税の方がアパート経営前(更地状態)よりも低く抑えられます。
土地の固定資産税路線価の高い地域ほど、アパート・マンションを建築した方が有利となります。
ただし、目安としては、建物の容積率が約100%までは上記関係が成立しますが、建物の容積率が100%を超えますと、逆転する場合があります。
4.アパート経営における空家の固定資産税・都市計画税の改正
2015年度(平成27年度)から特定空き家(*)の敷地となる土地は、固定資産税・都市計画税の軽減措置の対象外となりました。
*特定空き家は、下記の状態を満たす住宅を指します。
- 倒壊等、著しく保安上、危険となる恐れのある状態
- 著しく衛生上、有害となる恐れのある状態
- 適切な管理が行なわれていないことにより、著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である状態
なお、特定空き家につきましては、下記の記事をご覧ください。
5.まとめ
以上、
- アパート経営による固定資産税の軽減措置
- アパート経営による都市計画税の軽減措置
- アパート経営前後の固定資産税・都市計画税の比較
- アパート経営における空家の固定資産税・都市計画税の改正
について解説しました。
固定資産税・都市計画税の軽減は、アパート経営の目的にはなりません。
あくまでも結果として付随してくるものです。
ただし、毎年発生する必要経費となりますので、固定資産税・都市計画税の軽減を侮ることはできません。
敷地面積によっては、毎年、数十万円から数百万円の必要経費削減を行うことができます。
事前にシミュレーションを行うことが重要です。
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7.参考・引用Webサイト
※1 「全国地価マップ」 一般財団法人 資産評価システム研究センター
https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal
※2 「新築住宅に対する減額措置」 神戸市
https://www.city.kobe.lg.jp/a03858/kurashi/tax/kotei/sansyo4/sinkei.html
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