個人にかかる所得税は、所得が増えるほど税率が高くなる累進課税方式です。
一方、法人にかかる法人税は、比例課税方式です。
法人税率は、現時点(令和4年)で23.2%と一律です。
つまり、アパート経営を法人化することにより、節税できます。
アパート・マンションを個人名義で経営されている方の中で、
「法人化することにより所得がいくらになれば、節税対策上、有利になるのか?」
と、お悩みの方はいませんか?
実は、課税所得金額:800万円超が目安となります。
この記事では、
- アパート経営における所得税と法人税の比較
- アパート経営を法人化するメリット
- アパート経営を法人化するデメリット
について解説します。
家賃収入ではなく、課税所得が800万円以上になりますと、アパート経営を法人化することにより、所得税を節税することができます。
1.アパート経営における所得税と法人税の比較
そもそもアパート経営の法人化は、
- アパート経営開始時から、アパートの名義を法人名義で運営
- 個人名義で運営してきたアパートを、法人名義に変更してアパート経営を再開
することです。
法人税の概要、法人税率、所得税率、アパート経営における法人税と所得税の比較について解説します。
1-1.法人税とは?
個人に課税されるのが所得税で、法人に課税されるのが法人税です。
所得(利益)に対して課税される仕組みは、所得税も法人税も同じです。
1-2.法人税率(※1)
しかし、
・国の財政
・税収の状況
・法人誘致による海外諸国との競合
により定期的に見直しがあります。
特に最近の法人税率は、引下げ傾向にあり、現時点(令和2年)で最も低い税率まで引き下がりました。
資本金1億円以下の中小法人の場合、
- 課税所得800万円以下の部分に対しては、法人税率は15%
- 課税所得800万円超 の部分に対しては、法人税率は23.20%
になります。
1-3.個人の場合の所得税率(※2)
個人の場合の所得税率と控除額は、下表の通りです。
- 課税所得695万円以上~ 900万円未満の部分に対しては、所得税率は23%
- 課税所得900万円以上~1,800万円未満の部分に対しては、所得税率は33%
になります。
1-4.アパート経営における所得税と法人税の比較
課税所得がいくらになると、法人化するメリットがあるのかを、シミュレーションしてみます。
【事例】
アパート経営の課税所得金額が、700万円、800万円、900万円、1,000万円の場合、それぞれの法人税(法人経営)、所得税(個人経営)を計算します。
1.課税所得:700万円の場合
法人税=700万円×15%=105万円
所得税=700万円×23%-63.60万円=97.4万円
法人税 > 所得税
2.課税所得:800万円の場合
法人税=800万円×15%=120万円
所得税=800万円×23%-63.60万円=120.4万円
法人税 ≦ 所得税
3.課税所得:900万円の場合
法人税=800万円×15%+100万円×23.2%=143.2万円
所得税=900万円×23%-63.60万円=143.4万円
法人税 ≦ 所得税
4.課税所得:1,000万円の場合
法人税=800万円×15%+200万円×23.2%=166.4万円
所得税=1,000万円×33%-153.60万円= 176.4万円
法人税 < 所得税
課税所得 | 所得税 個人名義 | 大小 関係 | 法人税 法人名義 |
700万円 | 97.4万円 | < | 105万円 |
800万円 | 120.4万円 | > | 120万円 |
900万円 | 143.4万円 | > | 143.2万円 |
1,000万円 | 176.4万円 | > | 166.4万円 |
以上より、
・課税所得が800万円を下回ると、所得税(個人経営)の方が安い
・課税所得が800万円を上回ると、法人税(法人経営)の方が安い
よって、アパート経営は、課税所得が800万円を越える時点で法人化しますと、節税になります。
2.アパート経営を法人化するメリット
2-1.メリット1:税金が減少
上記【事例】のシミュレーション結果より、課税所得が800万円を分岐点として、税金が安くなります。
アパート経営の規模拡大を図るのであれば、法人化する方が有利です。
2-2.メリット2:所得を分散
法人化しますと、役員や社員への給与を経費として計上できます。
2-3.メリット3:給与所得控除・所得控除が可能
法人化して社長自身に給与を支払うことで、
・給与所得控除分
・所得控除分
の課税所得を差し引くことができます。
個人の場合の所得税・住民税対策の詳しい内容については、下記の記事をご覧ください。
2-4.メリット4:損益通算年数が9年
所得が赤字になった場合、繰り越すことができ、翌年以降の所得や利益と相殺が可能です。
・個人の場合:3年間
・法人の場合:9年間
赤字分を繰越控除できます。
ちなみに、アパート経営において経費計上できるものを挙げますと、下表の通りです。
これは、個人の場合も法人の場合も同じです。
できるもの・できないもの
2-5.メリット5:生命保険を全額経費
個人の生命保険控除は、高額な保険料を支払っていても、年間最大12万円の控除にしかなりません。
法人の場合は制限がありません。
2-6.メリット6:退職金を経費計上
個人の場合、退職金を経費計上できません。
法人の場合には退職金を経費計上できます。
2-7.メリット7:減価償却費の計上が自由
個人の場合、減価償却費は毎年一定の金額が強制的に経費計上されます。
法人の場合、都合のいい時に好きなだけ経費計上できます。
3.アパート経営を法人化するデメリット
3-1.デメリット1:設立費用・手間が必要
法人設立にあたり、
・登記費用
・司法書士報酬
などが、約25万円~30万円必要になります。
また、法人税申告などの税理士報酬が必要になります。
アパート経営を個人で開始してから法人化する際には、個人から法人への移転費用として
・不動産取得税
・登記費用
が必要になります。
なお、所有権移転登記については、下記の記事をご覧ください。
3-2.デメリット2:赤字決済でも法人住民税を納税
法人の場合、赤字決済でも年間7.2万円の法人住民税の納税が必要です。
内訳は、
・法人市民税 :5万円
・法人都道府県民税:2.2万円
の均等割という税金です。
4.まとめ
以上、
- アパート経営における所得税と法人税の比較
- アパート経営を法人化するメリット
- アパート経営を法人化するデメリット
について解説しました。
課税所得が800万円以上になりますと、アパート経営を法人化しますと、所得税を節税できます。
アパート経営の規模拡大を図るのであれば、法人化する方が有利です。
法人税率以外でも、
・経費計上
・損益通算年数
などで、収益を抑えることができます。
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6.出所
※1 「No.5759 法人税の税率」 国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
※2 「No.2260 所得税の税率」 国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
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