財政赤字が続く中、
・国家予算
・地方自治体予算
は国債・地方債に依存しています。
自治体の赤字経営が続く中、公務員の給与も上がりにくくなっています。
その様な状況下、
「アパート経営を副業で検討しているが、問題になるだろうか?」
「兼業規定に抵触しているのでは?」
と、お悩みの公務員の方はいませんか?
実は、条件を満たせば、公務員がアパート経営をしても兼業とはみなされません。
この記事では、
- 公務員によるアパート経営の法的規定
- 公務員によるアパート経営のメリット・デメリット
- 公務員がアパート経営により、地方公務員法違反で懲戒免職
- 公務員による兼業規定内でのアパート経営のシミュレーション
などを解説します。
公務員がアパート経営を可能にする条件を知ることができ、堂々と収益を上げることができます。
1.公務員によるアパート経営の法的規定

公務員は原則として兼業禁止です。
(国家公務員法103条、地方公務員法38条)
理由として、
- 公務員としての職務に支障を生じるため
- 公務員の勤務する公的機関の信用を落とすため
- 公務員の有する秘匿情報の漏洩防止のため
などが挙げられます。

公務員によるアパート・マンション経営は、合法か違法かを説明します。
1-1.公務員の兼業に関わる法律・規定

国家公務員の兼業に関する法律は国家公務員法第103条、第104条です。
地方公務員の兼業に関する法律は地方公務員法38条です。
1-1-1.国家公務員の場合
とあります。

国家公務員の職務規定の中に、兼業に関する規定が定められています。
とされています。
- 国家公務員の性格
- 営利目的の私企業の役員・顧問・評議員の性格
とは相容れないため、私企業の役員・顧問・評議員との兼業や自営を禁止しています。
とされています。
1-1-2.地方公務員の場合
とあります。

地方公務員の職務規定の中に、兼業に関する規定が定められています。

1-2.不動産経営に関わる兼業条項
公務員によるアパート経営は、「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」に記述されている条件に抵触すれば、兼業とみなされます。
逆にそれをクリアすれば、アパート経営は認められます。
1-2-1.人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について ※3
となっています。

公務員がアパート経営を認められるのは、
・5棟10室未満(4棟9室以下)の規模でのアパート経営
・アパート経営の年間賃貸収入が500万円未満(駐車料金も含む)
・アパート管理業務を委託(自主管理は不可)
の場合となります。

地方自治体によっては、特別な規定が設けられていますので確認が必要です。
1-2-2.建物規模の事例
・戸建賃貸住宅5戸の場合
→ 独立家屋5棟以上に抵触し、兼業とみなされ届け出が必要
・戸建賃貸住宅4戸の場合
→ 独立家屋4棟以下であり、兼業とみなされない。

・アパート1棟:1K10戸の場合
→ 独立区画部分10室以上に抵触し、兼業とみなされ届け出が必要
・アパート1棟:2DK9戸の場合
→ 独立区画部分9室以下であり、兼業とみなされない。

1-2-3.不動産収入額の事例
・アパート1棟:1K6戸、家賃6万円の場合
→ 年間家賃収入:6万円×6戸×12か月 = 432万円 < 500万円
兼業とみなされない。
・アパート1棟:1K7戸、家賃6万円の場合
→ 年間家賃収入:6万円×7戸×12か月 = 504万円 > 500万円
兼業とみなされ届け出が必要
1-2-4.駐車場の事例
・機械式駐車場経営の場合 → 兼業とみなされ届け出が必要
・駐車場経営9台の場合 → 兼業とみなされない。
・駐車場経営10台の場合 → 兼業とみなされ届け出が必要

1-3.国家公務員の自営兼業承認申請の出し方
国家公務員の場合、所属する省庁、役所の部署の責任者に報告し、許可を受ける形式となります。
地方公務員の場合、地方自治体により異なりますので、自治体ごとの確認が必要です。
1-3-1.自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係) ※4
人事院が発行する書式ですが、必要事項を記入し提出します。


(不動産等賃貸関係)
その際、不動産経営に伴う下記書類の添付も必要となります。
- 不動産管理委託契約書(自主管理が不可のため)
- 物件概要書(5棟・10戸未満が条件のため)
- 不動産収入管理表(年間賃貸収入が500万円未満を条件とするため)
1-3-2.申請許可が得られやすい場合
相続・生前贈与、転勤、処分困難な不動産の場合、申請許可が得られやすい傾向にあります。
- 相続・生前贈与の場合
相続や生前贈与による不動産取得の場合、比較的許可が得られ易くなります。
この場合、一定規模(5棟以上10戸以上不動産収入500万円以上)を超えていても先祖代々引き継がれてきた不動産を処分するわけにもいかず、認められ易くなります。 - 転勤
マイホームを購入したが、遠方へ転勤により住めなくなった場合、賃貸物件として活用する際は、認められ易くなります。 - 処分困難な不動産
所有不動産を処分(売却・贈与等)したい場合、様々な事情・条件により処分が困難な時、認められ易くなります。

2.公務員によるアパート経営のメリット・デメリット

公務員によるアパート経営のメリット・デメリットについて解説します。
2-1.公務員によるアパート経営のメリット
2-1-1.金融機関の融資審査が通りやすい
公務員は、将来的に安定した給与収入があるため、金融機関の審査上、民間企業の勤務者よりも与信が高いと評価され、融資を受け易い立場にあります。
また、公務員には、
・技術職
・事務職
・警察官
・消防士
・自衛官
等、様々な職種がありますが、公務員であれば一様に与信が高いと評価されます。
2-1-2.融資が低金利
公務員は、与信が高いため、比較的低金利にて融資を受けることが出来ます。
キャッシュフロー(手残り額)に一番影響を与えるのが金利であるため、有利にアパート経営を行うことが出来ます。

2-1-3.不労所得
公務員の立場上、自主管理は禁止され、管理委託しなければなりません。
逆をいえば、管理会社にアパート経営を任せる形式となりますので、不労所得に近くなります。
ただし、管理会社に任せきりにせず、定期的に
・入居者状況の確認
・入居者の要望事項
・アパート建物の劣化・損傷確認
などを行う必要があります。
なお、公務員は、住宅ローンを借りる際にも有利な立場です。
詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。

また、不動産投資ローンについては、下記の記事をご覧ください。

さらに、不動産投資ローンと住宅ローンの違いについては、下記の記事をご覧ください。

2-2.公務員によるアパート経営のデメリット
2-2-1.原則、兼業禁止による周囲からの視線
公務員は原則として兼業禁止ですが、「1-2.不動産経営に関わる兼業条項」において解説した範囲内であれば、堂々とアパート経営を法に抵触することなくできます。
しかし、そのことを知る人はごく少数であり、アパート経営をしていることが知られると、周囲から間違った疑義の目で見られる可能性があります。
2-2-2.公務員の経営に対する資質
公務員の職務内容は、公共性が高い仕事であるため、ビジネス感覚(損益感覚)が希薄です。
与信の高さゆえに、金融機関から多額の融資を受けられますが、
・入居者状況確認
・入出金確認
・管理会社の業務確認
・建物の劣化・損傷の確認
などが甘くなり、アパート経営が、ずさんになり易くなります。
金融機関の審査を通過しても、アパート経営の安全が保障される訳ではありません。
あくまでもアパートオーナーの経営手腕が問われることを、認識する必要があります。
2-2-3.災害などの想定外の問題
公務員に限った話ではありませんが、最近の災害発生数は増加傾向にあり、被害規模も大きくなっています。
具体的には、地震、台風、洪水、高潮、津波、火災などです。

ハザードマップなどを参考にしながら立地を見極め、アパート経営の是非を判断しなければなりません。
3.公務員がアパート経営により地方公務員法違反で懲戒免職

公務員が、アパート経営により懲戒処分・懲戒免職に至った経緯などについて解説します。
3-1.地方公務員法違反が発覚
2016年1月にあった報道によりますと、佐賀広域消防局の消防副士長が、不動産収入により地方公務員法に違反し、懲戒処分になったことが明るみになりました。
消防副士長は、マンション・駐車場などを佐賀市内外に12件所有しており、年間不動産収入は、約7,000万円でした。
これは、不動産年間収入限度額:500万円の14倍にもなります。
3-2.懲戒処分
消防副士長は不動産収入を申告せず、許可を得ずに不動産事業を行っていたことが、住民からの通報により明るみとなり、3か月の減給10分の1という懲戒処分となりました。
3-3.懲戒免職
しかし、7月19日を過ぎても改善が認められず、7月31日に懲戒免職処分となりました。

4.公務員による兼業規定内でのアパート経営のシミュレーション

「1-2.不動産経営に関わる兼業条項」において解説した通り、
公務員が行うアパート経営は、
・建物規模
・不動産収入額
・駐車場の制限
などを守る必要があります。
その制約内で出来るアパート経営をシミュレーションしてみます。
4-1.事例1:1棟8戸のアパート経営
下表の条件設定により、シミュレーションを行います。
ここで、
・ローン金利:3%
・ローン返済期間:30年
・管理費:家賃収入の5%
とします。

先ず、兼業規定に抵触するか否かの診断を行います。
・建物規模の点 : 1棟8戸 < 5棟10戸
→ 兼業とみなされません。届け出は必要ありません。
・不動産収入額の点 : 480万円/年 < 500万円/年
→ 兼業とみなされません。届け出は必要ありません。
シミュレーション結果は、下表の通りです。

注意点は、上記の建物で駐車場がある場合、駐車料金も加味する必要があります。
家賃収入が480万円/年の場合、別途駐車料金が20万円/年を超えますと、総額の不動産収入が500万円/年を超えますので、兼業にあたります。
そうなりますと、届け出をする必要があります。
4-2.事例2:戸建4棟4戸、駐車場4台の賃貸経営
下表の条件設定により、シミュレーションを行います。
ここで、
・ローン金利:3%
・ローン返済期間:30年
・管理費:家賃収入の5%
とします。

先ず、兼業規定に抵触するか否かの診断を行います。
・建物規模の点 : 4棟4戸 < 5棟10戸
→ 兼業とみなされません。届け出は必要ありません。
・不動産収入額の点 : 494.4万円/年 < 500万円/年
→ 兼業とみなされません。届け出は必要ありません。
・駐車台数の点 : 4台 < 10台
→ 兼業とみなされません。届け出は必要ありません。
シミュレーション結果は、下表の通りです。

なお、キャッシュフローの詳しい説明につきましては、下記の記事をご覧ください。

利回りの詳しい内容につきましては、下記の記事をご覧ください。

5.まとめ
以上、
- 公務員によるアパート経営の法的規定
- 公務員によるアパート経営のメリット・デメリット
- 公務員がアパート経営により、地方公務員法違反で懲戒免職
- 公務員による兼業規定内でのアパート経営のシミュレーション
について解説しました。
公務員でも兼職規定を守れば、堂々とアパート経営により収益を上げることができます。
また、兼職規定に抵触しても、届け出をして認定されれば、アパート経営は可能です。
これからアパート経営を始められる公務員の方は、先ず自身がアパート経営に向いているか否かを判断します。
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7.参考・引用WEBサイト
※1 「国家公務員法、電子政府の総合窓口」 e-Gov
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000120
※2 「地方公務員法、電子政府の総合窓口」 e-Gov
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000261
※3 「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」人事院
https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/14_fukumu/1403000_S31shokushoku599.html
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※5 「賃貸収入7千万円の消防士を懲戒免職」(佐賀広域消防局)
佐賀新聞Live
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/7582
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