これまでの住宅は、「造っては壊す」(スクラップ&ビルド)というフロー型住宅でした。
住宅(設備)寿命は、30年~40年程度です。
一方、「手入れをして長く使う」というストック型住宅が、増えています。
その様な背景もあり、100年に亘り数世代が暮らし続ける「長期優良住宅」制度が、国土交通省より施行されました。
長期優良住宅を検討されている方の中に
「長期優良住宅のメリット・デメリットは何だろうか?」
と考えておられる方はいませんか?
実は、
・メリット :税金・補助金・金利
・デメリット:建築価格・申請費用
などです。
メリットはデメリットを十分にカバーするだけの魅力にあります。
この記事は、
- 長期優良住宅の概要
- 長期優良住宅に対する税の特例(メリット)
- 長期優良住宅に対する補助金・金利優遇(メリット)
- 長期優良住宅のデメリット
- 長期優良住宅の申請手続き
について解説します。
1.長期優良住宅の概要(※1)

長期優良住宅の
・建築計画
・維持保全計画
を作成し、所管行政庁に申請して基準に適合する場合、認定を受けることができます。
1-1.長期優良住宅の開始時期
長期優良住宅の開始時期ですが、
- 新築住宅の認定制度は、平成21年6月4日
- 既存住宅を増築・改築する場合の認定制度は、平成28年4月1日
より開始しています。

1-2.長期優良住宅の認定条件
長期優良住宅の認定を受けるためには、各性能項目に適合することが条件となります。
性能項目には、
・バリアフリー性
・可変性
・耐震性
・省エネルギー性
・居住環境
・維持保全計画
・維持管理/更新の容易性
・劣化対策
・住宅規模(住戸面積)
があります。

(出所:国土交通省)※1
2.長期優良住宅に対する税の特例(メリット)

長期優良住宅を建てますと、税の特例を受けることができます。
2-1.「住宅ローン控除」の最大控除額が、400万円から500万円に!
2-1-1.10年間の最大控除額:500万円
長期優良住宅は、一般住宅と比較して、控除対象借入限度額の優遇措置があり、
- 一般住宅の借入限度額 :4,000万円
- 長期優良住宅の借入限度額:5,000万円
となります。
したがって、控除率は年1%であるため、最大控除額は10年間で、
- 一般住宅の最大控除額 :400万円
- 長期優良住宅の最大控除額:500万円
となります。
上記をまとめますと、下表になります。

長期優良住宅と一般住宅の比較
2-1-2.主な適用条件
住宅ローン控除の主な適用条件は、
- 居住用家屋
- 住宅の引渡しもしくは完了から6か月以内に居住
- 床面積が50㎡以上
- 店舗などの併用住宅の場合、床面積の2分の1以上が居住用
- 住宅ローン借入期間が10年以上
- 合計所得金額が3,000万円以下
などとなります。
なお、「住宅ローン控除」については、下記の記事をご覧ください。

2-1-3.「すまい給付金」も併用利用可能
また、「住宅ローン控除」と併用して、「すまい給付金」も利用することができます。
「すまい給付金」については、下記の記事をご覧ください。
2-2.不動産取得税の控除額が、1,200万円から1,300万円に!
課税標準額から規定の控除額を差し引いた残額に対して、3%の税率を乗じて算出されます。
課税は、有償・無償・登記有無に関係なく、売買・贈与・交換・建築・増改築などにより、不動産を取得した場合に課されます。
長期優良住宅は、一般住宅と比較して、控除額の優遇措置があり、
・一般住宅の控除額 :1,200万円
・長期優良住宅の控除額:1,300万円
となります。
不動産取得税の控除の主な適用条件は、
・床面積が50㎡以上240㎡以下
・都道府県の条例で定める申告
などとなります。
2-3.登録免許税が、引き下げ!
住宅の存する立地を管轄する法務局に対して、登記申請用紙に登記印紙を貼る形式で納税します。
長期優良住宅は、一般住宅と比較して、税率の優遇措置があり、保存登記の場合、
・一般住宅の控除額 :0.15%
・長期優良住宅の控除額:0.1%
となります。
移転登記の場合は、もっと有利になります。
保存登記と移転登記の登録免許税率をまとめますと、下表の通りです。

長期優良住宅と一般住宅の比較
2-4.固定資産税の減額措置適用期間が、2年延長!
住宅を新築しますと、固定資産税の減額措置があり、適用期間は半額になります。
長期優良住宅は、一般住宅と比較して、適用期間の優遇措置があり、
【一般住宅】
・戸建て :3年間
・マンション:5年間
【長期優良住宅】
・戸建て :5年間
・マンション:7年間
となります。
上記をまとめますと、下表になります。

長期優良住宅と一般住宅の比較
固定資産税の減額措置の主な適用条件は、
・床面積が50㎡以上280㎡以下
となります。
3.長期優良住宅に対する補助金・金利優遇(メリット)

3-1.地域型住宅グリーン化事業(補助金上限額:100万円)(※2)
長期優良住宅は、木造新築の場合、地域型住宅グリーン化事業の補助対象となり、上限額:100万円までの補助金を受け取ることができます。
本事業の適合条件は、
- 主要構造部(建築基準法第2条第5号)が木造のもの
- 採択されたグループごとの地域型住宅の共通ルールに即して、グループの構成員である中小住宅生産者などにより供給される新築住宅
となります。
3-2.長期優良住宅化リフォーム推進事業(補助金上限額:250万円)(※3)
既存住宅をリフォーム(増改築)などにより、所管行政庁から長期優良住宅と認定された場合、長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助対象となり、上限額:250万円までの補助金を受け取ることができます。

の適合条件(出所:国土交通省)※3
本事業の適合条件は、
- リフォーム工事前に
・インスペクションを実施
・維持保全計画
・リフォーム履歴の作成 - リフォーム工事後に下記の性能基準を充足
<必須項目>
・劣化対策
・耐震性(新耐震基準適合性など)
・省エネルギー対策の基準
<任意項目>
・維持管理・更新の容易性
・高齢者対策(共同住宅)
・可変性(共同住宅)の基準 - 上記性能項目のいずれかの
・性能向上に資するリフォーム工事
・三世代同居対応改修工事
・子育て世帯向け改修工事
・防災性・レジリエンス性の向上改修工事
のうち一つ以上実施
となります。
3-3.【フラット35】S:10年間、金利が引下げ!(※4)
長期優良住宅は、【フラット35】S(金利Aタイプ)の条件に適合し、【フラット35】の借入金利から年0.25%の金利が下がる優遇措置があります。
3-3-1.【フラット35】S
長期優良住宅は。金利Aタイプを利用することができます。

(出所:住宅金融支援機構)※4
3-3-2.【フラット50】
また、長期優良住宅は、【フラット50】の利用が可能です。
4.長期優良住宅のデメリット

4-1.一般住宅よりも建築費が高い
長期優良住宅は、一般住宅よりも、建築コストが高くなります。
理由は、様々な住宅性能項目を満たす必要性が生じるからです。
ただし、大手ハウスメーカーは、一般住宅の場合でも上記の性能項目の多くを、既に標準仕様として採用している住宅商品があります。
その場合、長期優良住宅の建築でも、建築コストの上乗せは、さほどありません。
しかし、一般の中小工務店の場合、一般住宅を建築するよりも、20%~30%ほど上乗せになる場合があります。
4-2.一般住宅よりも工期が長い
長期優良住宅は、一般住宅よりも、約1か月工期が長くなります。
理由は、建築費同様に、様々な住宅性能項目を満たす必要性が生じるからです。
ただし、大手ハウスメーカーは、一般住宅の場合でも上記の性能項目の多くを、既に標準仕様として採用している住宅商品があります。
その場合、長期優良住宅の建築であっても、工期が1~2週間程度長くなるだけで済みます。
また、長期優良住宅の建築経験やノウハウを保有する工務店や建築設計事務所の場合、スムーズに建築工事を進めることが可能です。
事前に実績の確認をしておくと安心です。
しかし、一般の中小工務店の場合、単品受注生産方式を採用している会社が一般的となります。
標準仕様を特に定めていないケースも少なからずあります。
その場合、長期優良住宅の建築に1~2か月ほど工期が延長します。
4-3.申請費用を要し、必要書類の準備に時間を要する
長期優良住宅の申請手続きには、
・数万円の費用
・多くの書類作成
が必要となり、準備が大変です。
長期優良住宅は、登録住宅性能評価機関において事前審査(技術的審査)を通過した後に、所管行政庁へ申請する流れとなります。
その際、登録住宅性能評価機関が発行する「適合証」の提出が必要になります。
また、所管行政庁においても審査があり、認定されますと「認定通知書」を受領することができます。
上記の申請手続きには、
・所管行政庁:数千円
・登録住宅性能評価機関:数万円
かかります。
合計5万円~6万円といったところです。
ただし、上記は自身で申請する場合の金額です。
業者に依頼する場合、例えば
・ハウスメーカー
・工務店
・建築設計事務所
などを通して申請しますと、20万円~30万円の手数料が必要になります。
4-4.10年に1度の点検が必要
長期優良住宅の性能項目の中に、維持保全計画があり、最低でも10年に一度の割合で、点検を行う必要があります。
点検の度に点検費用がかかり、家屋の状況によっては、修繕費用が高くつくケースもあります。
点検義務の無い一般住宅と比較しますと、点検費用・修繕費用が、定期的に発生する点がデメリットともいえます。
しかし、住宅寿命は、一般住宅の2~3倍以上長くなります。
5.長期優良住宅の申請手続き

東京都の場合、長期優良住宅の標準的な申請の流れは、下図の通りです。

注文住宅等の場合
(出所:東京都住宅政策本部)※5
5-1.ステップ1:着工前に必要書類を提出
「長期優良住宅建築等計画」の作成を行います。
意匠・構造・設備関係図書は、建築を依頼する
・ハウスメーカー
・工務店
・建築設計事務所
に作成してもらいます。
申請の全てを業者に依頼する場合、委任状が必要になります。
長期優良住宅の技術的審査に必要な書類は、下記の通りです。
- 認定申請書
- 長期優良住宅建築等計画に係る技術的審査依頼書
- 設計内容説明書:認定基準適合の根拠となる設計内容を説明するための書類
- 委任状:建築主以外が手続きを行う場合に必要
- 意匠・構造・設備関係図書(各種図面、仕様書、計算書など)
5-2.ステップ2:登録住宅性能評価機関へ事前審査依頼
上記の書類一式が準備できましたら、登録住宅性能評価機関へ提出し、事前審査(技術的審査)依頼を行います。
5-3.ステップ3:登録住宅性能評価機関の審査
登録住宅性能評価機関は、9つの性能項目の中で、8つの項目について審査を行います。
登録住宅性能評価機関と所管行政庁による事前審査項目をまとめますと、下表の通りです。

所管行政庁による事前審査項目
(出所:東京都住宅政策本部)※5
5-4.ステップ4:適合証を登録住宅性能評価機関から受理
上記8つの審査項目について、認定基準を満足していれば、「適合証」を発行します。
申請者は、「適合証」を受理し、所管行政庁への認定申請準備を行います。
5-5.ステップ5:適合証と認定申請書を所管行政庁へ提出
所管行政庁へ
- 認定申請書
- 登録住宅性能評価機関から受理した「適合証」
を提出し、審査依頼を行います。
この認定申請は、工事着工前に行う必要がありますので、注意が必要です。
所管行政庁は、性能項目の中で、「居住環境の維持及び向上への配慮」について審査を行います。
5-6.ステップ6:所管行政庁の審査通過後に、認定通知書を受理し完了
所管行政庁は、認定基準を満たしていれば、「認定通知書」を発行します。
申請者は、「認定通知書」を受理して完了します。
6.まとめ
以上、
- 長期優良住宅の概要
- 長期優良住宅に対する税の特例(メリット)
- 長期優良住宅に対する補助金・金利優遇(メリット)
- 長期優良住宅のデメリット
- 長期優良住宅の申請手続き
について解説しました。
長期優良住宅は、100年に亘り数世代が住み続ける住宅となります。
したがって、スクラップ&ビルドの回数が減少し、地球環境にも優しい住宅といえます。
特に先進国は、地球温暖化のペースをストップさせるためにCO2削減に躍起です。
日本も、CO2削減に貢献できる長期優良住宅に重点を置くことは、当然といえます。
なお、マイホーム購入の流れや注意点、ポイントについては、下記の記事をご覧ください。

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8.参考・引用WEBサイト
※1 「長期優良住宅のページ」
国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000006.html
※2 「地域型住宅グリーン化事業」
地域型住宅グリーン化事業評価事務局
※3 「令和3年度 長期優良住宅化リフォーム推進事業について」
国土交通省住宅局住宅生産課
https://r03.choki-reform.com/doc/summary_doc_01.pdf
※4 「【フラット35】Sとは?」
住宅金融支援機構
https://www.flat35.com/lp/19/s/index.html
※5 「新築する住宅について長期優良住宅の認定申請をする場合」
東京都住宅政策本部
https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/juutaku_seisaku/yuuryou-10.html
9.不動産関連情報







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